半生はんせい)” の例文
何ぼ自然主義だと云って、斯う如何どうもダラダラと書いていた日には、三十九年の半生はんせいを語るに、三十九年掛るかも知れない。も少し省略はしょろう。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
要するに、予の半生はんせい将死しょうしの気力をし、ややこころよくその光陰こういんを送り、今なお残喘ざんぜんべ得たるは、しんに先生のたまものというべし。
帆村は、わざとなんにもこの旦那様について説明をしなかったが、玄関の段でもって、この旦那様のこれまでの半生はんせいがはっきり分ったような気がした。
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あおいろふくしたに、半生はんせい経験けいけんなやみと生活せいかつえてきたからだが、けて、あせばんでいました。
陛下の崩御ほうぎょは明治史の巻をじた。明治が大正となって、余は吾生涯が中断ちゅうだんされたかの様に感じた。明治天皇が余の半生はんせいを持って往っておしまいになったかの様に感じた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
おもえば女性の身のみずかはからず、年わかくして民権自由の声にきょうし、行途こうと蹉跌さてつ再三再四、ようやのち半生はんせいを家庭にたくするを得たりしかど、一家のはかりごといまだ成らざるに、身は早くとなりぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
盗れないと主張したのは、ごまの蠅では半生はんせい以上眼をいできた男だった。
梅颸の杖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長火鉢のそば徒然ぽつねんとしていると、半生はんせいの悔しかった事、悲しかった事、乃至ないし嬉しかった事が、玩具おもちゃのカレードスコープを見るように、紛々ごたごたと目まぐるしく心の上面うわつらを過ぎて行く。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
在獄中に出獄せば如何いかにせんこころざしを達せばかくなさんと、種々の空想に耽りしも、出獄もなくその空想は全くあだとなり、失望のきょくわれとはなしに堕落だらくして、半生はんせいを夢と過ごしたることの口惜しさよ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)