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北国
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きたぐに
二人の
子供は、その
時分のことを
思い
出して
目を
輝かした。ほんとうに、さびしい
北国の
景色が、ありありと
浮かんできたのです。
このがらんと晴れ渡つた
北国の木の香に満ちた空気を吸はう。
エニシダが、かの
北国に美しく咲き匂うのは。
蕭やかにこの日も
暮れぬ、
北国の古き
旅籠屋。
独り
者の
幸作は、
家の
中に
話し
相手もなくその
日を
暮らしていました。
北国は十二
月にもなると、
真っ
白に
雪が
積もります。
このとき、お
父さんは、
自分の
子供の
時分のことをいろいろと
話されたのでした。このさびしい
春も、
北国の
人々には、どんなにか一
年のうちで
楽しいときであるかしれない。
新吉は、りんごを
拾い
上げると、にっこり
笑って、その
冷たい
紅いくだものを
自分のほおに
押しあてて、あくまで、
北国の
畠に
生まれた、
高いかおりをかごうとしたのであります。
そして
北国の
植物が、
風や、
雪と
戦うことを
忘れたときに
枯れてしまうように、
苦しみと
戦ってきた
人が、その
苦しみを
忘れたときは、やはり、その
人は、
終わってしまうでしょう。