分捕ぶんど)” の例文
橋弁慶の行衛ゆくえは不明であるが、この弁慶が分捕ぶんどりした銅牌は今でも蓮杖の家に残ってるはずだが、これも多分地震でどうかしてしまったろう。
私は何とかしてそれを分捕ぶんどりしようと一生懸命に骨折った。幾度か同君の宅まで足を運んで懇望したが、何としても譲ってくれようとしない。
一番どういう事の働きをするかといえば、まず戦争が起れば乱暴狼藉ろうぜきを働いて、内地人の財産を分捕ぶんどりする位の事でとても国の役には立たない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
この一戦こそは、求めもしないのに、官から賊寨ぞくさいへ、わざわざみつぎの贈り物を運んできたようなものだった。分捕ぶんどり品だけでもたいへんな量である。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
市長はちまた分捕ぶんどり、漁人は水辺におのが居を定めた。すべての分割の、とっくにすんだ後で、詩人がのっそりやって来た。彼ははるか遠方からやって来た。
心の王者 (新字新仮名) / 太宰治(著)
朝鮮征伐から分捕ぶんどって来た荒仏あらぼとけ、その時代の諸将の書翰しょかん太閤たいこう墨附すみつき……そんなような物をいろいろ見せられた幼時の記憶も長いあいだ忘られていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
枕を取って、スポンジボオル、枯れなくていい、万年いけの大松を抜いて、(構えました、)をる。碁盤、将棋盤を分捕ぶんどって、ボックスととなえますね。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大きい軍艦でも商船でも鯨のやうに引き揚げて修繕するドックと云ふものや日清戦争で分捕ぶんどりした軍艦や
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
松本藩の家老水野新左衛門みずのしんざえもんという人の討死うちじに、そのほか多数の死傷に加えて浪士側に分捕ぶんどりせられた陣太鼓、鎗、具足、大砲なぞのうわさは高遠藩を沈黙させた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
空魔艦は、若鷹丸探険隊員の手によって、うまく分捕ぶんどることができた。しかしこれをどうして日本まで動かしたらいいのであろうかと、大月大佐たちは困っていた。
大空魔艦 (新字新仮名) / 海野十三(著)
弓鉄砲で打ちすくめろ! むやみと喊声かんせいを上げるのだ! 牽制けんせいするのだ、敵勢をな! それから槍だ! 突き崩すがいい! 手に余ったら火をかけろ! 分捕ぶんどり功名勝手次第。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それは官軍が彰義隊から分捕ぶんどった糧米を、その見物の連中に分配しますと、我も我もと押し迫り、そのゴタゴタ中に一俵二俵とかついで行く……大勢のことで、誰がどうしたのか
ある少数の人の手に余分に分捕ぶんどられ、それがために残りの多数の人々は食うものも食わずに困っているのである、というふうに考えている者もあろうが、それは大きな間違いである。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
坊ばは隣りから分捕ぶんどった偉大なる茶碗と、長大なる箸を専有して、しきりに暴威をほしいままにしている。使いこなせない者をむやみに使おうとするのだから、いきおい暴威をたくましくせざるを得ない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ソレを分捕ぶんどりしようと云うことを企てゝ、そうして奥州おうしゅう宮古みやこと云う港で散々たたかった所が、負けて仕舞しまっ到頭とうとう降参して、夫れから東京へ護送せられて、その時は法律も裁判所も何もないときで
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そして母に対する勝利の分捕ぶんどひんとして、木部は葉子一人のものとなった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
吉といわれし軍夫は、分捕ぶんどりなるべし、紫緞子どんすの美々しき胴衣どうぎを着たり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
若衆首わかしゆくびと、分捕ぶんどられたる珍寳たから
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「待っていた」と、呼延灼こえんしゃくは言った。「——どうせ、やぶれかぶれと、打って出て来たにちがいない。こっちは船手不足のところ、渡りに船だ。船を分捕ぶんどれ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木像に近よると、子供のことで手が届かない。閻魔王のひざに上り、短刀を抜いてその目をえぐり取り、莫大ばくだい分捕ぶんどり品でもしたつもりで、よろこんで持ち帰った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ながらく海底大陸に分捕ぶんどられていた巨船クイーン・メリー号はいまや奇妙なる帰還の途にのぼることとはなった。はたしていかなる方法によって、洋上に浮かびあがるのであろうか。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それをり返し、またあわせて武具馬具などの分捕ぶんどり品を二十余りょうの車馬に積ませて
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ロケットを分捕ぶんどってしまう決心をかため、階段をかけおりました。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「金御幣の馬印、この手に、分捕ぶんどったりっ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)