光景ようす)” の例文
ぶるぶるとしてハッと気が付くと、隊の伍長のヤーコウレフが黒眼勝のやさしい眼で山査子さんざしあいだからじっ此方こちらを覗いている光景ようす
そばへ寄るまでもなく、おおきな其の障子の破目やれめから、立ちながらうち光景ようすは、衣桁いこうに掛けた羽衣はごろもの手に取るばかりによく見える。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
折柄おりから梯子段を踏轟ふみとどろかして昇が上ッて来た。ジロリと両人ふたり光景ようすを見るやいなや、忽ちウッと身を反らして、さも業山ぎょうさんそうに
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
先生は床に起直って布団ふとん倚掛よっかかっている。梅子も座に着いている、一見一座の光景ようす平常ふだんと違っている。真面目で、沈んで、のみならず何処どこかに悲哀の色が動いている。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
迷惑はかくしても匿し切れない、おのずか顔色がんしょくに現われている。モジ付く文三の光景ようすを視て昇は早くもそれと悟ッたか
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
思わずも足をとどめて視ると、何か哀れな悲鳴を揚げている血塗ちみどろの白い物を皆佇立たちどまってまじりまじり視ている光景ようす
と娘が引取った、我が身の姿と、この場の光景ようす、踊のさらいに台辞せりふを云うよう、細くとおる、が声震えて
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不思議な光景ようすは、美しき女が、針のさきで怪しき魔をあやつる、舞台に於ける、神秘なる場面にも見えた。茶店ちゃみせの娘と其の父は、感に堪へた観客の如く、呼吸いきを殺して固唾かたずを飲んだ。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
此日隣のは弥々いよいよ浅ましい姿になって其惨状は筆にも紙にも尽されぬ。一度光景ようすうかがおうとして、ヒョッと眼をいて視て、慄然ぞっとした。もう顔の痕迹あとかたもない。骨を離れて流れて了ったのだ。
高笑らいをめて静かになッて、この頃では折々物思いをするようには成ッたが、文三に向ッてはともすればぞんざいな言葉遣いをするところを見れば、泣寐入りに寐入ッたのでもない光景ようす
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
雨を得た市民が、白身に破法衣やれごろもした女優の芸の徳に対する新たなる渇仰かつごう光景ようすが見せたい。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
雨を得た市民が、白身はくしん破法衣やれごろもした女優の芸の徳に対する新たなる渇仰かつごう光景ようすが見せたい。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかし寂寞ひっそりとした四辺あたり光景ようすが、空も余りに澄み渡って、月夜か、それとも深山みやまかと思われるようでありましたのは、天地が、その日覚悟をめて死ににく、美人に対する
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不思議な光景ようすは、美しき女が、針のさきで怪しき魔を操る、舞台における、神秘なる場面にも見えた。茶店の娘とその父は、感に堪えた観客かんかくのごとく、呼吸いきを殺して固唾かたずを飲んだ。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの………ひらきの、お仕置場らしい青竹の矢来やらいの向うに……貴女等あんたたち光景ようすをば。——
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あわれに無慚むざん光景ようすだっけ。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)