先達せんだつて)” の例文
あ、先達せんだつては、なんでしたつけ、記念祭つていふの? さうぢやない、祝賀会ね、ほんとにいろいろどうも……。父も喜びましたでせう。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
(僕は突然K君の夫人に「先達せんだつてはつい御挨拶もしませんで」と言はれ、当惑したことを覚えてゐる。)
歯車 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「いや、其樣そんな事はございません。先達せんだつても青年會館でお彈きになつたシヨウパンを拜聽したですが實に驚嘆しました。わたくしの學校の生徒なぞには勿體ない位の御手腕です。」
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
それからこのちやうらうのお茶碗ちやわん——これ先達せんだつてもちよいと拝見はいけんをいたしましたが此四品このよしなでおいくらでげす。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
『そら先達せんだつて東京とうきやうからかへつて奧野おくのさんにならつたしかならひたてだからなんにもけない。』
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ことに此度は悴事朝より出つづけにて、幕間まくあひも取込居り候間、失礼ながら老筆にて御礼の御受申上候。且又先達せんだつてより悴が一寸申上置候よし、甚だ麤末そまつのささ折奉御覧入候。御笑味奉願上候。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
先達せんだつて、村に立帰りし時、彼の島といふは、五穀豊饒、魚貝鳥獣多く、日本のやうに不自由することあらじ、一村のこらず引越すならば、主人、地頭と言ふも居らぬゆえ、頭を抑へられる事なし
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
星をみてると、星が僕になるんだなんて笑つてたわよ、たつた先達せんだつてよ。
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
これは半年で逐ひ出しました。その次が、先達せんだつてまでおいでになつた大学の先生で、それ、何と云ひましたつけな……。
百三十二番地の貸家 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
おほきにねえさんから小言こごと頂戴ちやうだいしたりなんかしました、へいぢやうさんらつしやいまし、うも先達せんだつての二番目狂言ばんめきやうげん貴嬢あなたがチヨイと批評くぎをおさしになつた事を親方おやかたに話しましたら
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
この方は御料地の係のかた先達せんだつてから山林を見分みわけしてお廻はりになつたのですが、ソラ野宿の方が多がしよう、だから到当身体をこはして今手前共で保養して居らつしやるのです。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「早朝から伺ひまして、先達せんだつては又お手紙を頂戴いたしまして有難う御在いました。」
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
友情があつてもよし、なくてもよし、恩をてもよし、被ないでもよしなんだ。むくいられない仕事だなどと、先達せんだつての会でも誰かが云つたが、そんなことはあるもんか。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
此様こんなにお早くらつしやるてえのはぽどすきでなければ出来できない事でエヘヽヽ先達せんだつて番附ばんづけの時にあがりましたが、うも彼所あすこかららしつたかと思ふとじつびつくりするくらゐなもので
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
先達せんだつても申上げましたとほり、金満家のお後取あととりだけあつて、どこか鷹揚なところがおありになるもんですから、従兄さんとおつしやる方が、いろいろ、御心配なさいましてね。
頼母しき求縁(一幕) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)