-
トップ
>
-
傍近
>
-
そばちか
やがて
傍近く寄りて、
幾許似たると
眺むれば、
打披ける
葩は
凛として玉を
割いたる如く、濃香
芬々と
迸り、葉色に
露気有りて
緑鮮に、
定て
今朝や
剪りけんと
覚き花の
勢なり。
女子どもは
何時しか
枕元をはづして
四邊には
父と
母と
正雄のあるばかり、
今いふ
事は
解るとも
解らぬとも
覺えねども
兄樣兄樣と
小き
聲に
呼べば、
何か
用かと
氷嚢を
片寄せて
傍近く
寄るに
二人は
櫻が
岡に
昇りて
今の
櫻雲臺が
傍近く
來し
時、
向ふより五六
輛の
車かけ
聲いさましくして
來るを、
諸人立止まりてあれ/\と
言ふ、
見れば
何處の
華族樣なるべき、
若き
老ひたる
扱き
交ぜに