すゝ)” の例文
と其の場をはずして次の間へ退さがり、胸にたくみある蟠龍軒は、近習の者にしきりと酒をすゝめますので、いずれも酩酊めいていして居眠りをして居ります。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
勘次かんじこゝろよくおつぎにめいじた。おつぎはふる醤油樽しやうゆだるから白漬しろづけらつきやう片口かたくちしておつたのそばすゝめた。勘次かんじは一つつまんでかり/\とかじつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
この對話の間、女あるじは我等に酒をすゝめて、ジエンナロの慣々なれ/\しきをもにくむ色なく、尚暫く無邪氣なる應答をなし居たり。
「さうですとも。正真正銘のロシア人です。」書肆は笑ひながら答へて、同時に一杯の「近事片々」をすゝめた。近事片々とはリキヨオルの事である。
板ばさみ (新字旧仮名) / オイゲン・チリコフ(著)
で、上つて行つて、蒲団などをすゝめられると、彼女は里離れのした態度で、あらためて両手をついて叮嚀ていねいにお辞儀をした。彼は面喰めんくらつたやうな困惑を感じた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
小僧こばうずつて来し茶を上人自ら汲み玉ひてすゝめらるれば、二人とも勿体ながりて恐れ入りながら頂戴するを、左様遠慮されては言葉に角が取れいで話が丸う行かぬは
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
プリスタフはそれを受け取つて、「さあ、お上がんなさい。お上がんなさい」とすゝめた。
〔評〕南洲弱冠じやくくわんの時、藤田東湖ふじたとうこえつす、東湖は重瞳子ちやうどうし躯幹くかん魁傑くわいけつにして、黄麻わうま外套ぐわいとう朱室しゆざや長劒ちやうけんして南洲をむかふ。南洲一見して瞿然くぜんたり。乃ち室内に入る、一大白をぞくしてさけすゝめらる。
「さうだよ、まつせえよおめえ、めでゝえさけだから、威勢えせえつければおめえ身體からだ工合ぐえゝだつてちつとぐれえならなほつちやあよ」ばあさんまたすゝめた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「どうです、プラトン・アレクセエヰツチユさん、最近の通信をもう一杯」と編輯長がすゝめる。
板ばさみ (新字旧仮名) / オイゲン・チリコフ(著)
長二は跡に残って和尚に厚く礼を述べて帰ろうといたすを、和尚が引留めて、自分のへやに通して茶などをすゝめながら、長二が仏事に心を用いるは至極奇特きどくな事ではあるが
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「おあつうござんすねどうも」おつぎはたすきをとつて時儀じぎべながらおつたへちやすゝめた。三にんしばら沈默ちんもくしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
幸「酒は嫌いだというから無理にすゝめなさんな、親方肴でもたべておくれ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
母「なりません、すゝめるときません」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)