たれ)” の例文
しかるにひとりの男来り、さもはぢらふさまにて人のうしろ欲言ものいはんとしていはず、かしらたれなみだをおとしけり、人々これをみれば同村おなじむらなにがし次男じなん也けり。
この雪いくばくの力をつひやし、いくばくの銭を費し、終日ほりたる跡へその夜大雪降り夜明て見れば元のごとし。かゝる時は主人あるじはさらなり、下人しもべかしらたれ歎息ためいきをつくのみなり。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
たれ一言ももの云ず依て越前守は四郎左衞門善右衞門并に井戸ゐど源次郎へ一々聲をかけられコリや憑司夫に居は四郎左衞門善右衞門井戸ゐど源次郎成ぞ此源次郎が四郎左衞門抱の遊女うつせみと云女を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此雪いくばくのちからをつひやし、いくばくの銭をつひやし、終日しゆうじつほりたるあとへその夜大雪あけて見ればもとのごとし。かゝる時は主人あるじはさら也、下人しもべかしらたれ歎息ためいきをつくのみ也。
たれよわりしていに安間平左衞門はそばに居たりしが冷笑あざわら否早いやはや御前の樣に御心弱くては表向おもてむき吟味ぎんみの時は甚だ覺束おぼつかなしすべて物事は根深ねぶかはかり決して面色かほいろに出さぬ樣なさねばならぬ事なり然るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
○さて幽霊はかげも見えず、源教げんけうあたゝまりて睡眠ねふけをもよほし、居眠ゐねふりしつゝつひに倒れんとして目をひらきしに、お菊が幽霊いうれい何時いつきたりてほとけむかひ、まうけたる新薦あらこもの上にすはかしらたれてゐたり。