がわ)” の例文
つえには長く天秤棒てんびんぼうには短いのへ、五合樽ごんごうだる空虚からと見えるのを、の皮をなわがわりにしてくくしつけて、それをかついで
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
鈴の音が、いま汽車を降りた新しい客の到着をしらせた。前から来ている知人達が迎えに走り出て、男も女も、女同士も男同士も、かわがわる頬へ接吻し合った。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
つぎつぎに刀をていく。一同は帯刀を下げて、かわがわる起って奎堂の前へ行き、相を受けては座に帰る。いつの間にか人々の背ろに、税所郁之進が来て坐っている。
稲生播磨守 (新字新仮名) / 林不忘(著)
私はこれだけの事実を極度の注意を払って検査した上で、もう一度、岩形氏の枕元に在る注射器と茶色の小瓶と、ポケットから出た小鋏とをかわがわる取り上げてみた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
息子の居ない一ヶ所からっぽうのような現実の生活と、息子の帰って来た生活のいろいろな張り合いのある仮想生活とがかの女の心にかわがわる位置を占めるのである。かの女は雑草が好きだ。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
三人の女が、かわがわる昼間の空想や、夜の夢に立って、案外退屈は感じない。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かずにしたら何万本なんまんぼん。しかも一ぽんずつがみんなちがった、わかおんなかみだ。——そのなかだまってかおめてねえ。一人一人ひとりひとりちがったおんなこえが、かわがわりにきこえてる。このながらの極楽ごくらくだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
この小さい屋根の下には、これまでかわがわる、𨿸、兎、豚がすんでいたのだが、今はからっぽで、休暇中は、いっさいの所有権をにんじんが独占している。彼は易々やすやすとそこへはいり込むことができる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
眼鏡の中には嬢を初め他の四名の顔がかわがわる現われた。皆汗を掻いていた。ナイン嬢の耳の附け根にある黒い黒子ほくろが、汗で白粉おしろいを洗われたらしくハッキリと見えて来た。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かわがわる足を上げて、さぎのような恰好、紅珊瑚べにさんごの爪さきを無心に拭いていると
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)