人蔘にんじん)” の例文
重い作切鍬よりも軽いハイカラなワーレンホーで無造作にうねを作って、原肥無し季節御構いなしの人蔘にんじん二十日大根はつかだいこんなどくのを
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
野菜も買うとなるとなかなか高いので、大根人蔘にんじんの種を安くゆずってもらってこの裏の五坪の畑にき、まことに興覚めな話で恐縮ですが
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
知栄 時々……思い出したようにジャガ芋や人蔘にんじんの絵を画いてらっしゃるわ。でも、別にそれが書きたいから書いてらっしゃるとは思われないわ。
女の一生 (新字新仮名) / 森本薫(著)
大根の葉はいうまでもなく、人蔘にんじんの葉から尻尾しっぽ、ジャガいもの皮や、せり、三つ葉の根、ふきの葉まで捨てることはなかった。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お舟のやうなお皿には、じやがいもと、さやゑんどうと、人蔘にんじんとの煮付が盛られ、赤いわんには、三ツ葉と鶏卵たまごのおつゆが、いいにほひを立ててゐるのです。
母の日 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
父上はこれに一々水引みずひきをかけ綺麗にはしを揃えて、さて一々青い紙と白い紙とをしいた三宝へのせる。あたりは赤と白との水引の屑が茄子なすの茎人蔘にんじんの葉の中にちらばっている。
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
古びて、少し傾いた屋根がのっかっている村ソヴェトの車寄せの前で、青年共産主義同盟員コムソモーレツニキータが、ルバーシカをしめた帯革へ片手さしこんで、片手でやけに人蔘にんじん色の頭をかいている。
ピムキン、でかした! (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
茯苓ふくりやう肉桂にくけい枳殼きこく山査子さんざし呉茱萸ごしゆゆ川芎せんきう知母ちぼ人蔘にんじん茴香ういきやう天門冬てんもんとう芥子からし、イモント、フナハラ、ジキタリス——幾百千種とも數知れぬ藥草の繁る中を、八幡知らずにさ迷ひ歩いた末
僕の寝小便がなかなか直らぬので、ぎうが好い、が好い、いぬが好いなどと教へて呉れるものがあつたが、父はわざわざ町まで行つて、朝鮮人蔘にんじん二三本買つて来てくれたことをおぼえて居る。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
花椰菜はなやさい、千日大根、萵苣ちさ、白菜、パセリ、人蔘にんじん、穀物、豆類。海産物でははしりこんぶ、まだら、すけとうだら、からふとます、まぐろかぜ(雲丹うに)、それから花折はなおり昆布などが目についた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
それを錠剤にして馬にませると、今云ったような恐ろしい中毒を起すが、反対に人間の重病患者に内服させると、人蔘にんじんと同じような効果をあらわすので、私は内職に製造して薬屋に売らせている。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
人蔘にんじんガリガリ んでるぞ。
饑餓陣営:一幕 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
朝鮮人蔘にんじん燻製くんせいのやうな手
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そこで単に「二郎」と呼んでみると、庭師をつれて来たり、台所から人蔘にんじんを一本持っていったりしたそうである。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「ええ、大丈夫よ。それよりあんた、胡瓜きうりでも人蔘にんじんでも洗つてよ。これから忙しいのよ。」
母の日 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
「小僧の八百吉だよ。たつた十四だといふが、大變な身體だ。八百屋の伜で、人蔘にんじん大根だいこんよりは、藥草の方が良からうと、此家へ奉公させられてゐるが、正直な働き者で、評判の良い小僧だ」
人蔘にんじんの髯、七、八寸、家畜用だと人はいう。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
大根でえこんが大根であり、人蔘にんじんが人蔘だっていうこった、いいか、大根は大根、人蔘は、それ人蔘だろうが、宗旨の違えもそのとおり、禅宗は禅宗、真宗は真宗よ
おごそかな渇き (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「そうなんだよまったく、あきれ返ったもんさね」と良江が答える、「これっぱかりの人蔘にんじん一本でさ、一本でよお勝さん、あたしゃまあ値段を聞いただけでつんのめりそうになっちゃったわ」
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)