人心じんしん)” の例文
「およそ人心じんしんうちえてきのこと、夢寐むびあらわれず、昔人せきじんう、おとこむをゆめみず、おんなさいめとるをゆめみず、このげんまことしかり」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ところが人心じんしんはその面のごとし、十人よれば十人ともその心が同一でない、同じ友だちのドノバンは、なにからなにまで、富士男に反対であった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
以上述べた如くローマンチシズムの思想即ち一の理想主義の流れは、永久に変ることなく、深く人心じんしんの奥底にながき生命を有しているものであります。
教育と文芸 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
種々のかたちで世界の各所かくしょあらわるゝ、人心じんしん昂奮こうふん、人間の動揺が、まぐろしくあらためて余の心の眼にうつった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
お前さんのは其処そこにお葉漬はづけかありますよ、これはわたしわたしのおあしで買つたのですと天丼てんどんかゝ候如そろごときはあへて社会下流かりうの事のみともかぎられぬ形勢けいせいそろ内職ないしよく人心じんしん
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
油画の色には強き意味あり主張ありてく制作者の精神を示せり。これに反して、もし木板摺の眠気ねむげなる色彩中に制作者の精神ありとせば、そは全く専制時代の萎微いびしたる人心じんしんの反映のみ。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
〔譯〕知らずして知る者は、道心だうしんなり。知つて知らざる者は、人心じんしんなり。
思うに当時人心じんしん激昂げきこうの際、敵軍を城下に引受ひきうけながら一戦にも及ばず、徳川三百年の政府をおだやか解散かいさんせんとするは武士道の変則へんそく古今の珍事ちんじにして、これを断行だんこうするには非常の勇気ゆうきを要すると共に
道心は人心じんしんのその正を得たる心と王陽明おうようめいは説いたが、せいを得るとは、人欲じんよくのまざらないところで、つまらぬ感情のなきをいうところであると思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
油画の色には強き意味あり主張ありてく制作者の精神を示せり。これに反して、もし木板摺の眠気ねむげなる色彩中に制作者の精神ありとせば、そは全く専制時代の萎微いびしたる人心じんしんの反映のみ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
人心じんしん籠絡ろうらくしてその激昂げきこう鎮撫ちんぶするにるの口実こうじつなかるべからず。
学理あるいは歴史の研究についてはいうまでもない。昔のシナの学者も道心どうしん人心じんしんと区別して説いたそうである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)