五躰ごたい)” の例文
まだ若かったし、新婚の妻に裏切られたのだから、五躰ごたいが消えてしまうかと思われるほど絶望し、怒った。しかし彼は思案した。
霜柱 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
昨夜ゆふべつてつた彫像てうざうのまゝ突返つゝかへされて、のめ/\とかついでかへつたんです。しか片腕かたうでもぎつてある、あのさいたせたが。……あゝ、わたし五躰ごたいしびれる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鳴鏑めいてきの如くとがりたる声ありて、奈落ならくに通ず、立つこと久しうして、我が五躰ごたいは、こと/″\く銀の鍼線しんせんを浴び、自らおどろくらく、水精しばらく人と仮幻かげんしたるにあらざるかと、げに呼吸器の外に人間の物
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
「だって恨みをはらすなんて」とおみやが云った、「五躰ごたいが満足でいてさえかなわないのに、片輪になってから、それも右の腕を折られてしまってからなにができるの」
無残むざんや、なかにもいのちけて、やつ五躰ごたい調とゝのへたのが、ゆびれる、乳首ちくびける、みゝげる、——これは打砕うちくだいた、をのふるつたとき、さく/\さゝらにざう
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
先陣をつるぎの切尖きっさきとすれば本城のまもりは五躰ごたいといえよう、五躰のちからまったくしてはじめて切尖も充分にはたらくことができるのだ、たとえ先陣、留守の差はあっても
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
が、頂上ちやうじやうからとんには、二人ふたりとも五躰ごたい微塵みじんだ。五躰ごたい微塵みぢんぢや、かほられん、なんにもらない。うすりや、なにすくふんだか、すくはれるんだか、……なにふんだか、はゝはゝ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)