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下六番町
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しもろくばんちやう
註、
建つて
三百年といふ
古家の
一つがこれで、もう
一つが
三光社前の
一棟で、いづれも
地震にびくともしなかつた
下六番町の
名物である。
決して
惡くいふのではない、
聲はどうでも、
商賣は
道によつて
賢くなつたので、この
初夏も、
二人づれ、
苗賣の
一組が、
下六番町を
通つて、
角の
有馬家の
黒塀に
女中の
方は、
前通りの
八百屋へ
行くのだつたが、
下六番町から、
通へ
出る
藥屋の
前で、ふと、
左斜の
通の
向側を
見ると、
其處へ
來掛つた
羅の
盛裝した
若い
奧さんの
が、
炎の
勢は
其の
頃から
衰へた。
火は
下六番町を
燒かずに
消え、
人の
力は
我が
町を
亡ぼさずに
消した。