万歳まんざい)” の例文
旧字:萬歳
塩は万歳まんざいに似ていると思え。一合の汁に入れた塩の十倍を一升の汁に入れて煮て見たまえ。集団すれば強くなるのは人間だけとはかぎらない。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
平手ひらてで板を叩くようなつづみの音をさせて、鳥打帽子をかぶった万歳まんざい幾人いくにんも来ます。かね太皷たいこを鳴らすばかりで何にも芸のない獅子舞も来ます。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
本邦でも弥勒十年辰の年など万歳まんざいが唱え祝い、余幼時「大和国がら女のよばいおとこ弥勒の世じゃわいな」てふ俚謡を聞いた。
山里は万歳まんざい遅し梅の花。翁去来きよらいへ此句を贈られし返辞に、この句二義に解すべく候。山里は風寒く梅のさかりに万歳来らん。どちらも遅しとや承らん。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「——さつきから、何だか変だ、変だと思つてたが、お稲荷さんの話を聞きながら、万歳まんざいを思ひ出してゐたんだ。」
大凶の籤 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
最初にはこれが万歳まんざい太夫たゆう以上に、我々の正月とは深い関係のあったことを、鳥の方でももうとっくに忘れている。
「お前のように、楽屋でそんなことを言うもんじゃないぞい——見よや、日の出に鶴だ。丁度御誂おあつらえだ。これで袴を穿いて御覧、立派な万歳まんざいが出来るに」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
正月には万歳まんざいが来た。太夫は皆三河から来たが、才蔵は才蔵市で雇うのであった。その頃は各大名屋敷とも万歳を呼んだ。私の藩主は勿論私の内も呼んだ。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
「壮快々々。一番片岡君のめ祝宴を開いて万歳まんざいを称へやう、」と伊勢武熊は傲然として命令するやうに
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
外には羽子はねの音、万歳まんざいつづみ——。そして、ふと万吉の耳に、角兵衛獅子の寒げな太鼓が耳についた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その楽器の来るのも待たないで、八字髭の手品使いは、酒樽のふちを叩きながら、胴間声どうまごえをはり上げて、三曲万歳まんざいを歌い出した。玉乗娘たまのりむすめの二三が、ふざけた声で、それにあわした。
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
……いま、また女中が、表二階の演技場で、万歳まんざいがはじまるから、と云って誘いに来た。——毎日雨ばかり続くから、宿でも浴客、就中なかんずく、逗留客にたいくつさせまい心づかいであろう。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
万歳まんざいではない、日傭取ひようとりだったそうで、——文吉と一緒に江戸へ出て来て、昔は兄弟分だったそうですが、いつの間にやら一方は出世して、長者番付にも載るようになり、一方は落ちぶれて
毎年正月お馴染の万歳まんざいが先ず三州の代表的人物です
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
万歳まんざいのゑぼしをはしるあられかな 胡布
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
万歳まんざいさんは
朝おき雀 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
鼓というのが三河の万歳まんざい以外に、使う者がないようになれば、後はただタンポポの音の快さと、その花のあざやかな色とをたのしむばかりで、言わばその次にもっと面白い名前の
万歳まんざいは一加える一は三。万歳は二人でしゃべる。二人でしゃべるから一人でしゃべる時の二倍のボリュームがあるかというと、さにあらず、それよりはるかに効果は大きい。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
万歳まんざいは維新以後全く衰えたと見えて、わたしの幼い頃にもすでに昔のおもかげはなかった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
母屋おもやばたにまじって、後家のおこうや、小娘の朱実あけみを相手に、万歳まんざいを歌ったり、軽口をいって、人を笑わせたり、自分も笑いこけている客があると思うと、それがいつの間にか
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
万歳まんざい太夫たゆうで江戸へ来たというのは、世間の悪口にしても、ともかくも、ここへ根をおろしてざっと三十年、今では万両分限の一人として、江戸の長者番付の前頭まえがしら何番目かに据えられる嘉兵衛ですが
万歳まんざいは維新以後全く衰えたものと見えて、私の幼い頃にもすでに昔のおもかげはなかった。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
五日には城中に万歳まんざいを舞わしめらるべしとあって、おりふし来合わせて冬籠りをする旅役者沢田の某という者が、臨時に万歳になって召されたと記してある。十四日の宵のみは町家にも儀式があった。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
大通りでさえ其の通りであるから、裏通りや河岸通りは追い羽根と紙鳶の遊び場所で、そのあいだを万歳まんざいや獅子舞がしばしば通る。その当時の銀座界隈には、まだ江戸の春のおもかげが残っていた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)