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ぢやうさま
差出がましうござんすが、お
座興にもと
存じて、お
客樣の
前ながら、
申上げます、とお
孃樣、
御口上。——
内に、
日本と
云ふ、
草毟の
若い
人が
居りませう……ふと
思ひ
着きました。
見れば昔し
由縁ある人なる可し親子の
立擧動尋常ならず親は
篤實面に
顯れ娘は孝行
自然と知れまた容貌も
勝れたれば忠兵衞ほと/\
感心なし
主個の
方のうち向ひお見申せばお
宅樣はお二個
限にてお
孃樣は
失禮ながら
美麗きお生れ
質にて御座りますが定めしお
婿樣を
(
唯、
何、
変つたことでもござりませぬ、
私も
嬢様のことは
別にお
尋ね
申しませんから、
貴女も
何にも
問ふては
下さりますな。)
それから三代目が
嫁を
貰つたのは、名前は忘れたが、
何でもお
旗本のお
嬢様とか
何とかいふことだつた。お
旗本のお
嬢様が
嫁に
来るやうな
身代になつたのだから、たいした
身代になつた。
(
嬢様勘違ひさつしやるな、これはお
前様ではないぞ、
何でもはじめから
其処な
御坊様に
目をつけたつけよ、
畜生俗縁があるだツぺいわさ。)
何ぢやの、
己が
嬢様に
念が
懸つて
煩悩が
起きたのぢやの。うんにや、
秘さつしやるな、おらが
目は
赤くツても、
白いか
黒いかはちやんと
見える。