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あふぎ
月光其滑らかなる葉の
面に落ちて、葉は
宛ながら
碧玉の
扇と
照れるが、
其上にまた黒き
斑点ありてちら/\
躍れり。
李樹の影の
映れるなり。
近衞家の
京武士は、
綺麗な
扇で、のツぺりした
顏を
掩ひつゝ、
片手で
鼻を
摘まんで、三
間も
離れたところから、
鼻聲を
出した。
衣絞明るく
心着きけむ、
銀に
青海波の
扇子を
半、
螢より
先づハツと
面を
蔽へるに、
風さら/\と
戰ぎつゝ、
光は
袖口よりはらりとこぼれて、
窓外の
森に
尚美しき
影をぞ
曳きたる。
誘引に來たれども夫は
用向もあれば
行れぬと
斷りしに其時
貴殿は
扇子を落して來たから
貸て
呉ろと云ふ故
鐵の
扇を
貸て
遣つた其日鴻の巣の金兵衞が金五百兩
勝しを見て
汝れは先へ廻り金兵衞が歸りを