突然とつぜん)” の例文
すると其時そのとき夕刊ゆふかん紙面しめんちてゐた外光ぐわいくわうが、突然とつぜん電燈でんとうひかりかはつて、すりわる何欄なにらんかの活字くわつじ意外いぐわいくらゐあざやかわたくしまへうかんでた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ずっと後年になって、ある時突然とつぜん、親の老いたことに気が付き、己の幼かった頃の両親の元気な姿を思出したら、急になみだが出て来た。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
女同士をんなどうしはわあとたゞわらごゑはつして各自てんで對手あひていたりたゝいたりしてみだれつゝさわいだ。突然とつぜん一人ひとりがおつぎのかみへひよつとけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
周囲まわりてもらぬひとばかりであったが、突然とつぜんくちひげのえた角顔かくがおおとこひとが、かれまえへやってきて、ていねいにあたまげました。
村へ帰った傷兵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そういう彼女の打ちしおれたような様子は私にはたまらないほどいじらしく見えた。突然とつぜん後悔こうかいのようなもので私の胸は一ぱいになった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
吾等われら喫驚びつくりして其方そなた振向ふりむくと、此時このとき吾等われらてるところより、大約およそ二百ヤードばかりはなれたもりなかから、突然とつぜんあらはれて二個ふたりひとがある。
だから突然とつぜんこの小舅こじうと自分じぶんあひだ御櫃おはちいて、たがひかほ見合みあはせながら、くちうごかすのが、御米およねつては一種いつしゆ經驗けいけんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
名簿めいぼを取りに立とうとすると、東海さんが、突然とつぜん、大声で、「大坂ダイハンに聞けよ。大坂は、女の選手のことなら、とてもくわしいんだ」
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「その札は僕に売ってくれたまえ」と、突然とつぜんわたしの耳のすぐ上で、ベロヴゾーロフのがらがらした声がした。——「百ルーブル出すぜ」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
兒玉こだま先程來さきほどらいおほくちひらかず、微笑びせうして人々ひと/″\氣焔きえんきいたが、いま突然とつぜん出身しゆつしん學校がくかうはれたので、一寸ちよつとくちひらなかつたのである。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
きながら、雛鳥ひなしてきました。それはばかにおおきくて、ぶきりょうでした。母鳥ははどりはじっとそのつめていましたが、突然とつぜん
すると、こちらからはべつなんともおねがいしたわけでもなんでもないのに、ある突然とつぜん神様かみさまから良人おっとわせてやるとおおせられたのでございます。
わるいラランもすこしばかりさびしくなつてきた。今度こんどこそはらつてきた。すると突然とつぜん、ヱヴェレストの頂上てうじやうからおほきなこえ怒鳴どなるものがあつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
いつも両側のよごれた瓦屋根かはらやね四方あたり眺望てうばうさへぎられた地面の低い場末ばすゑ横町よこちやうから、いま突然とつぜん、橋の上に出て見た四月の隅田川すみだがは
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
突然とつぜん、発車のすずがひびくと痩せた紳士はあわてて太った紳士にもう一度お辞儀をしておいて、例の麦稈帽子をかぶると急いで向き直って歩き出した。
蝗の大旅行 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
ついに決断して青森行きの船出づるに投じ、突然とつぜん此地を後になしぬ。わかれげなばさまたげ多からむをおもんぱかり、ただわずかに一書を友人にのこせるのみ。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
このやま活火山かつかざんであることは明治二十六年めいじにじゆうろくねんいたるまでられなかつたが、このとし突然とつぜん噴火ふんかはじめたゝめ死火山しかざんでなかつたことが證據立しようこだてられた。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
あつすぐねむくなつたり、懵然ぼんやりするものだから一しんに)こゝろうちかんがへてゐますと、突然とつぜん可愛かあいをした白兎しろうさぎが、そのそばつてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ねむつては危險きけんだぞ。左手ひだりてかはけろ‥‥」と、しばらくすると突然とつぜんまへはう小隊長せうたいちやう大島少尉おほしませうゐ呶鳴どなこゑきこえた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
それはさておき、一同がおとし穴に気をとられているとき、キョロキョロとあたりを見廻みまわしていた牛丸平太郎が、突然とつぜん
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしてネネムをじろじろ見ていましたが、突然とつぜんそばに走って来て、ネネムの右の手首をしっかりつかんで云いました。
せるにあらぬかといふ、夢幻むげんきやうにさまよひ、茫然ばうぜんとしてうごかずにうしろから、突然とつぜん、一黒影くろかげ出現しゆつげんした。
突然とつぜんくらいなかで、ゴットフリートがうたいだした。むねの中でひびくようなおぼろなよわこえだった。少しはなれてたら、きとれなかったかも知れない。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
わたし翌朝よくちょう早くむねをおどらして北の谷へとでかけた。わなをしかけておいた場所へくると、突然とつぜん大きな灰色はいいろ姿すがたが、むくりと立ってげ出そうともがいた。
気むずかしやの春琴が佐助に対して突然とつぜんかかる温情を示したのはなぜであったろうか実は春琴の発意ではなく周囲の者がそう仕向けたのであるともいう。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
先刻せんこくから、賛否さんぴいずれともいわなかった、年のころ二十五、六さい小柄こがらな紳士は、そのとき突然とつぜん立ちあがって
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
見てるとも知らず源八げんぱちもち取上とりあげ二ツにわつなかあん繰出くりだし、あんあんもちもち両方りやうはう積上つみあげまして、突然とつぜん懐中ふところ突込つツこしばらくムグ/\やつてたが
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
笑顏ゑがほをまづする庭男にはをとこに、そのまヽすがりて箒木はヽきうごかせず、吾助ごすけまへがかけるかと突然とつぜん可笑をかしさ。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こまつたものだとはおもひながらも、ひとつは習慣しふくわん惰力だりよくでとう/\五個月間かげつかんやりつゞけた。さうすると、どうだらう。或日あるひ先方せんぱうやつ突然とつぜんぼくうちにやつてて……
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
おりから夕餉ゆうげぜんむかおうとしていたおれんは、突然とつぜんにしたはし取落とりおとすと、そのまま狂気きょうきしたように、ふらふらッと立上たちあがって、跣足はだしのまま庭先にわさきへとりてった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
小初の涙が薫の手のこうを伝って指の間から熱砂のなかに沁み入った。薫はそれを涼しいもののように眼を細めて恍惚こうこつと眺め入っていたが、突然とつぜん野太い男のバスの声になって
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
突然とつぜん横合いの松かげから口笛が起こった。と思う間もなく石のつぶてが四方から飛んできた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
しかし突然とつぜん次郎君は走るのをやめてしまいました。まけたってかまやしない、どうともなれという不敵ふてきな気持ちになってしまいました。そしてのそのそと歩きはじめました。
決闘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
今までの悲哀ひあいや苦痛はもとより其によツて少しもげんぜられたといふわけではないが、蔽重おつかさなツたくもあひだから突然とつぜん日のひかりしたやうに、前途ぜんと一抹いちまつ光明くわうめうみとめられたやうに感じて
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
此日このひくわいみやびなりしをおもして、詩を作らう、詩を作らう、和韻わゐんに人をおどろかしたいものともだへしが、一心いつしんつては不思議ふしぎ感応かんおうもあるものにて、近日きんじつ突然とつぜんとして一詩たり
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
突然とつぜんつて大地だいぢたゝきつけると、これほどの奴等やつら何万なんまんとなくをくつてわがものにしてやうといふところかね用意よういはしてるとおもはれるばかり、のあたらぬもりなかつちやはらか
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
このときそう鐵鉢てつぱつみづくちふくんで、突然とつぜんふつとりよあたまけた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
めさ突然とつぜんと尋ねらるゝは貴所きしよには當時の役人中にて發明はつめいは誰れとの評判と存ぜらるゝやとたづねらるゝに伊勢守は不思議ふしぎの尋なりと當惑たうわくながら暫く思案して答へられけるは御意に候當節御役人の中には豆州侯づしうこう其許そのもと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼女かのぢよあねだといふひとが、突然とつぜん竹村たけむらたづねてた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
すると突然とつぜん、橋の上の群衆や、岸に近い群衆が
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
これで、とにかく、ひとまず事件じけんわってしまったので、六年生ねんせい二人ふたりも、あちらへろうとしました。すると、突然とつぜん青木あおき
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私たちがそういう林の中の空地の一つへ辿たどり着いた時、突然とつぜん、一つの小石が何処どこからともなく飛んで来て私たちの足許あしもとに落ちた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「立て替えて下さる、立て替えて……」と、公爵夫人はぼそぼそ言ったが、突然とつぜん、声を限りにわめき立てた。——「ドゥニャーシカや!」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
やはり、手探りしながら、歩く暗さで、しばらくゆくと、突然とつぜん、足下のゆかが左右にれだし、しっかりみしめて歩かぬと、転げそうでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
不幸ふかうにも、この心配しんぱいくれ二十日過はつかすぎになつて、突然とつぜん事實じじつになりかけたので、宗助そうすけ豫期よき恐怖きようふいたやうに、いたく狼狽らうばいした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
どうかするとくら木陰こかげ潜伏せんぷくしてよめくるまちかづいたとき突然とつぜんくるま顛覆てんぷくさせてやれといふやうな威嚇的ゐかくてき暴言ばうげんをすらくことがある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そんなおしゃべりをしていますと、突然とつぜん空中くうちゅうでポンポンとおとがして、二がんきずついて水草みずくさあいだちてに、あたりのみずあかそまりました。
世間をはゞかるやうにまだ日の暮れぬさきから雨戸あまどめた戸外おもてには、夜と共に突然とつぜん強い風が吹き出したと見えて、家中いへぢゆう雨戸あまどががた/\鳴り出した。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
突然とつぜんこうのまっ黒な倉庫そうこが、空にもはばかるような声でどなりました。二人はまるでしんとなってしまいました。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しかしをつところしたわたしは、盜人ぬすびとごめにつたわたしは、一たいどうすればいのでせう? 一たいわたしは、——わたしは、——(突然とつぜんはげしき歔欷すすりなき
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)