“恍惚”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
こうこつ51.1%
うっとり31.9%
うつとり7.3%
くわうこつ4.6%
うっと1.1%
ほれぼれ0.8%
エクスタシイ0.5%
みとれ0.3%
うッとり0.3%
しげしげ0.3%
とぼけ0.3%
とろ0.3%
ぼう0.3%
ぼんやり0.3%
みと0.3%
エクスタシー0.3%
エクスターゼ0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
童話の創作熱に魂の燃えた時に、はじめて、私の眼は、無窮に、澄んで青い空の色をひとみに映して、恍惚こうこつたることを得るのであります。
『小さな草と太陽』序 (新字新仮名) / 小川未明(著)
事実黄金色の軽快なアルコオルが体内に流れ込んだのだから、隣の食卓の一組は食堂に来た時より一層若やぎ恍惚うっとりとして来たらしい。
三鞭酒 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
鼻筋はなすぢ象牙彫ざうげぼりのやうにつんとしたのがなんへば強過つよすぎる……かはりには恍惚うつとりと、なに物思ものおもてい仰向あをむいた、細面ほそおも引緊ひきしまつて
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
われをもくして「骨董こつとう好き」と言ふ、誰かたなごころつて大笑たいせうせざらん。唯われは古玩を愛し、古玩のわれをして恍惚くわうこつたらしむるを知る。
わが家の古玩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
優美なしなを作ったり、もし必要とあれば恍惚うっとりとなったり、悲しげな眸をしたり、さては謎めいた眸を送ることなど、なんでも自由自在に出来た。
袋棚ふくろだなと障子との片隅かたすみ手炉てあぶりを囲みて、蜜柑みかんきつつかたらふ男の一個ひとりは、彼の横顔を恍惚ほれぼれはるかに見入りたりしが、つひ思堪おもひたへざらんやうにうめいだせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
次の瞬間、彼は愛情と恐怖とのへんな工合に混り合つた、世にもふしぎな恍惚エクスタシイを感じだしてゐた。
(旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
見物けんぶつあれと無理にすゝむる故毎度のすゝ然々さう/\ことわるも氣の毒と思ひ或日あるひ夕暮ゆふぐれより兩人同道にて二丁町へ到り其處此處そこここと見物して行歩あるく中常盤屋と書し暖簾のれんの下りし格子かうしの中におときといふ女の居りしが文藏不※ふと恍惚みとれさまたゝずみける佐五郎はやくも見付みつけなにか文藏に私語さゝやき其家へ上りしがやみつきにて文藏は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
仕方がないから、黙って話を聴いているうちに、又いつしか恍惚うッとりと腑が脱けたようになって、雪江さんのかおが右を向けば、私のかおも右を向く。雪江さんのかおが左を向けば、私のかおも左を向く。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
奥様は残った花の香をいで御覧なすって、恍惚しげしげとした御様子をなさいました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
普通に邪視を以てにらみ詰めると、虫や鳥などが精神恍惚とぼけて逃ぐる能わず、蛇に近づき来り、もしくは蛇に自在に近づかれて、その口に入るをいうので、鰻が蛇に睥まれて、頭を蛇の方へ向けおよ
くものは、ぢて恍惚ぼうとした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その末は青う見える高原で、そのはては恍惚ぼんやりと知れなくなつて居ます。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
「これはね、こうするものだよ、見ておいで。」とたもとくわえてウ、都の手振なよやかに、柳の腰つきしなやかなるを、女の児は傍目わきめらず、首傾けて恍惚みとれいる。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自動車の意志は、さながら余に乗りうつって、臆病者おくびょうものも一種の恍惚エクスタシーに入った。余は次第に大胆だいたんになった。自動車が余を載せて駈けるではなく、余自身が自動車を駆ってせて居るのだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
このきらびやかな流転の姿に宇宙の秘義ミステリウムあり、恍惚エクスターゼが生じ、生成の浴霊エンツシアスムス……二年前の春であつた、私は何うにでも大きくさへ云へば事足りる原始哲学の大法螺の巌を砕いて、縷々と説き来つて
酒盗人 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)