おく)” の例文
新字:
しるべの燈火ともしびかげゆれて、廊下らうかやみおそろしきをれし我家わがやなにともおもはず、侍女こしもと下婢はしたゆめ最中たゞなかおくさま書生しよせい部屋へやへとおはしぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おくさんのこゑにはもうなんとなくりがなかつた。そして、そのままひざに視線しせんおとすと、おもひ出したやうにまたはりうごかしはじめた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
うつくしいてて、たまのやうなこいしをおもしに、けものかはしろさらされたのがひたしてある山川やまがは沿うてくと、やまおくにまたやまがあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
帶し段織だんおり小倉の大縞おほじまなる馬乘袴うまのりばかま穿うがち鐵骨の扇を持て腕捲うでまくりなしたる勢ひ仁王の如き有樣ゆゑ番頭久八アツと云ておく逃入にげいらんとするを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ふん、坊主ばうずか」とつてりよしばらかんがへたが、「かくつてるから、こゝへとほせ」とけた。そして女房にようばうおくませた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「おいこれ一寸ちよつと其所そこいてれ」とわたすと、きよめうかほをして、不思議ふしぎさうにそれを受取うけとつた。御米およねおく座敷ざしき拂塵はたきけてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すると、まばゆいようにかゞやをんながゐます。これこそ赫映姫かぐやひめちがひないとおぼしてお近寄ちかよりになると、そのをんなおくげてきます。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
別莊べつさうはずつとおく樹深きぶかなかつてるのを、わたしこゝろづもりにつてる。總二階そうにかい十疊じふでふ八疊はちでふ𢌞まはえんで、階下かいか七間なゝままでかぞへてひろい。
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
通にはそれを「ぎよつとした」と形ようするがその言葉があらはす程シヨツクのはげしいものではなく、何か日頃はおくのほうにしまつてあつて
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
この洞穴ほらあなは、アルタミラとはちがつて、たけたかおくふかあなであつて、兩側りようがはかべにやはり多數たすう動物どうぶついてあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ロレ おくらせられい。……内室おくがたも一しょにらせられい。……パリスどのにも。……いづれも亡姫なきひめ隨行ともをして墓場はかば準備したくをなされ。
「平次、八五郎と申したな、いや、御苦勞であつた。伜が誘拐かどはかされては、家内の恥辱になることぢや、それにおくの悲歎が見て居られない、何分頼むぞ」
しかし、なみ海深かいしん次第しだいあさくなるところ進入しんにゆうすると、それにつれてたかさをし、また漏斗じようごのようにおく次第しだいせまくなるところ進入しんにゆうしてもなみたかさがしてくる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
とうさんのおうちうらにも、のお百姓ひやくしやう神樣かみさままつつてありました。あか鳥居とりゐおくにあるちひさなやしろがそれです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
たゞ左右さいう斷崕だんがい其間そのあひだ迂回うねながるゝ溪水たにがはばかりである。辿たどつておくおくへとのぼるにれて、此處彼處こゝかしこ舊遊きういうよどみ小蔭こかげにはボズさんの菅笠すげがさえるやうである。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
良因 なにを申すもみちおく、遠い道中でございますから、旅から旅をさまよひ歩いて、いつ戻られるかはつきりとは判りませんが、先づ白河の關に秋風でも吹きましたら……。
能因法師 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
うなると日頃ひごろ探檢氣たんけんきしやうじて、危險きけんおもはず、さらおくはうすゝむと、如何いかに、足下あしもと大々蜈蜙だい/″\むかでがのたくツてる——とおもつたのはつかで、龕燈がんどうらしてると
葉書はがきかずが五百まいたつしたとき、とう/\教頭けうとうおくさんがきだしてをつと辭職じしよくすゝめた。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
この裾野すその景色けしきながめながら、だん/\のぼつて一合目いちごうめをもぎ、海拔かいばつ三千五百尺さんぜんごひやくしやくあたりのところへますと、いつしか草原くさはらも、ひと植林しよくりんしたはやしなどもなくなつて、ずっとおくゆかしい
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
私共わたくしどもも二三人宛にんづゝ休息時間きうそくじかんはいしても、かわる/″\つてはたらきますぞ、すると海底戰鬪艇かいていせんたうてい竣工しゆんこうするころには、鐵檻てつおりくるま出來上できあがつて、私共わたくしどもれに乘込のりこんで、深山しんざんおくつて
自然界しぜんかい現象げんしやうると、るものは非常ひぜううつくしく、るものは非常ひぜうおそろしい。あるひ神祕的しんぴてきなものがあり、あるひ怪異くわいいなものがある。これにはなにそのおく偉大ゐだいちからひそんでるに相違さうゐない。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
をんな市女笠いちめがさいだまま、わたしにをとられながら、やぶおくへはひつてました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おく博勞ばくらうさん何處どこけた、廿三さか七つで」と愉快ゆくわいこゑうたつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ふくろごゝろおくぶかにかくるとせしが
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
れよりおくるものは
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
見ゆるはおくの煙のみ
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
りしがかげさへ見ずなりし頃やう/\われに歸りつゝ慌忙あわてゝおくに走り入り今の次第を斯々かう/\と話すに妻も且あきれ且は驚く計りにて夫婦ふうふかたみおもて
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二間ふたま三間みま段々だん/\次第しだいおくふかると……燈火ともしびしろかげほのかにさして、まへへ、さつくれなゐすだれなびく、はなかすみ心地こゝち
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その意味いみで、せま路次ろじおくにあつた、木造もくざうの、あのささやかな洋館やうくわん日本麻雀道にほんマアジヤンだうのためには記念保存物きねんほぞんぶつたる價値かちつてゐるかもれない。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「そのつもりくないぢやないか」と答辯たふべんするやうなものゝ、この問題もんだい其都度そのつど次第々々しだい/\背景はいけいおくとほざかつてくのであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
きかねど晦日みそかつきなか十五夜じふごややみもなくてやはおく朦朧もうろうのいかなる手段しゆだんありしか新田につた畫策くわくさくきはめてめうにしていさゝかの融通ゆうづうもならず示談じだん
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこで少女をとめにふさはしい髮飾かみかざりや衣裳いしようをさせましたが、大事だいじですから、いへおくにかこつてそとへはすこしもさずに、いよ/\こゝろれてやしなひました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
……おくよ、其許そなたまへむすめうて、婿むこがねパリスどのゝふか心入こゝろいれほどらせて、よいかの、つぎ水曜日すゐえうびには……いや、ちゃれ、けふは何曜日なにえうびぢゃ?
なかにはひると十數疊敷じゆうすうじようじきぐらゐのおほきさのしつがあつて、そのおくすゝむと二三十間にさんじつけんほどもはひつてかれます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
すなは海水かいすい段々だん/\せまくなる港灣こうわんながむことになり、したがつて沖合おきあひではたかわづか一二尺いちにしやくにすぎなかつた津浪つなみも、港灣こうわんおくおいては數十尺すうじつしやくたかさとなるのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
すずめのおうちはやしおくたけやぶにありました。このすずめにはとうさまもかあさまもありました。たのしいおうちまへたけばかりで、あをいまつすぐなたけ澤山たくさんならんでえてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
愉快ゆくわい! 電車でんしや景氣けいきよくはしす、函嶺はこね諸峰しよほうおくゆかしく、おごそかに、おもてあつしてちかづいてる! かるい、淡々あは/\しいくもおきなるうみうへたゞよふてる、かもめぶ、なみくだける
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
正面しやうめんにはもう多田院ただのゐん馬場先ばばさきの松並木まつなみきえだかさねて、ずうつとおくふかくつゞいてゐるのがえた。松並木まつなみき入口いりくちのところに、かはにして、殺生せつしやう禁斷きんだんつてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
あのふか山岳さんがくおくには屹度きつとなにおそろしいものがひそんでゐるに相違さうゐないとかんがへた。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
それでも、西面南部せいめんなんぶの二横穴よこあなは、大概たいがい發掘はつくつをはり、其岩壁そのがんぺき欠壞けつくわいして、おく貫通くわんつうしてこと判明はんめいし、また石灰分せきくわいぶん岩面がんめん龜裂きれつ部分ぶぶんから漏出らうしゆつして、小鐘乳石せうしやうにふせき垂下すいかしてるのを發見はつけんした。
『あのね、おくさんにめづらしいお客樣きやくさまが……。』とつたまゝわたくしはう向直むきなほ
おくにてかねきこゆ。)おゝ、讀經ももはや始まつたと見ゆるな。
佐々木高綱 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
つまはおれがためらふうちに、なに一聲ひとこえ叫ぶがはやいか、たちまやぶおくへ走りした。盜人ぬすびと咄嗟とつさびかかつたが、これはそでさへとらへなかつたらしい。おれはただまぼろしのやうに、さう景色けしきながめてゐた。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
このとき道翹だうげうおくはういて、「おい、拾得じつとく」とけた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
色鳥いろどりはさしぐむみちおくぶかに
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
八谷やたにおくらすかな
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
これがむかし本陣ほんぢんだと叔父をぢつただゞつぴろ中土間なかどまおくけた小座敷こざしきで、おひらについた長芋ながいも厚切あつぎりも、大鮪おほまぐろ刺身さしみあたらしさもおぼえてる。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おくへ通じたれば天忠聞て大膳とあら我甥わがをひなり遠慮に及ばず直に居間ゐまへ通すべしとの事なれば取次の侍案内に及べば大膳は吉兵衞きちべゑ左京さきやうの兩人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
背広せびろかるいセルのひと衣にぬぎかへて、青木さんがおくさんと一しよにつましやかなばんさんをましたのはもう八ちかくであつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
大路おほぢあなぎつきのかげになびいてちからなささうの下駄げたのおと、村田むらたの二かい原田はらだおくきはおたがひのにおもふことおほし。
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)