“あら”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:アラ
語句割合
16.0%
11.9%
10.7%
9.8%
8.4%
7.1%
6.5%
4.2%
3.5%
3.0%
2.0%
1.8%
1.7%
1.5%
1.0%
0.9%
0.9%
0.4%
0.4%
欠点0.4%
0.4%
0.3%
0.3%
0.3%
0.3%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
表現0.2%
0.2%
0.1%
0.1%
凡有0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
粗暴0.1%
缺點0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
兇暴0.1%
0.1%
在世0.1%
0.1%
大海0.1%
弱点0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
発現0.1%
発覚0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
粗笨0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
詮索0.1%
調0.1%
0.1%
0.1%
露現0.1%
露顕0.1%
露顯0.1%
非点0.1%
顕現0.1%
0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
ことあらわれ夫おそれて妻を離縁したと載せ、スプレンゲルはある人鬼がその妻を犯すを、刀をふるうて斬れども更に斬れなんだと記す。
其富士が次第に迫り上って、峠の入口正面に前山を跨いで白い雲の上に全容をあらわした時には、峠の頂上に着いていた。八時である。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
室は綺麗きれいに掃除されたり。床の間の掛物、花瓶かびん挿花さしばな、置物の工合なんど高雅に見えて一入ひとしおの趣きあるは書生上りの中川がたしなみあらず。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
くはかついで遺跡ゐせきさぐりにあるき、貝塚かひづかどろだらけにつてり、その掘出ほりだしたる土器どき破片はへん背負せおひ、うしていへかへつて井戸端ゐどばたあらふ。
が、そのほかの連中は、広間で細君たちと一緒に、前のほうのあらビロオドの椅子や、壁際の所に腰かけながら、踊りを見物していた。
モミの木は、ちょっとあらっぽくゆかに投げだされましたが、すぐに下男が、お日さまの照っている、階段の方へ引きずっていきました。
もしそうならばあらことばをかけるのではなかったと、半七は少し気の毒になって元来た方をふり返ると、男の姿はもう見えなかった。
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
また日本にほん小説せうせつによくあらはれる魔法遣まはふづかひが、不思議ふしぎげいえんずるのはおほくは、一はん佛教ぶつけうから一はん道教だうけう仙術せんじゆつからたものとおもはれる。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
この方面であらたに発見された諸国のうちでは、日本国民のみがキリスト教を伝えるのに適している。かく彼は力強く主張しているのである。
鎖国:日本の悲劇 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
な会はざるにあらざるべし、作者の彼を写して粋癖をあらはすや、すでに恋愛と呼べる不粋者を度外視してかゝれるを知らざる可からず。
御酒ごしゆをめしあがつたからとてこゝろよくくおひになるのではなく、いつもあをざめたかほあそばして、何時いつ額際ひたひぎはあをすぢあらはれてりました。
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ところで、最初それと類推させたものを話すことにしよう。マームズベリー卿があらわした『ジョン・デイ博士鬼説』という古書がある。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
あらゆる人間の姿態と、あらゆる色彩の閃きと、また凡ゆる国籍の違った言葉の抑揚とが、框の区切りの中にぎっしり詰っている。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「この店さえ出来あがれば、少し資本をこしらえて、夏の末には己が新趣向の広告をまいて、あらゆる中学の制服を取ろうと思っている」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
あたりを片付け鉄瓶てつびんに湯もたぎらせ、火鉢ひばちも拭いてしまいたる女房おとま、片膝かたひざ立てながらあらい歯の黄楊つげくし邪見じゃけん頸足えりあしのそそけをでている。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おつぎのまだみじか身體からだむぎ出揃でそろつたしろからわづかかぶつた手拭てぬぐひかたとがあらはれてる。與吉よきちみちはたこもうへ大人おとなしくしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
彼はその一個の意志で、あらゆる心の暗さを明るさに感覚しようと努力し始めた。もう彼にとって、長い間の虚無は、一睡の夢のように吹き飛んだ。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
はじめ村中のこらず存じ申さずとのこたへなれば少しも手懸てがかりはなきに次右衞門の思ふ樣是は村中申合まをしあはせ掛り合を恐れて斯樣かやうに申立るならんとせきあらため威儀ゐぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「さあ! どうぞ。よくあらためてお受取り下さいませ! お預りしたときと、寸分違つてゐない筈ですから。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
同僚の仕事に欠点あらを見付けては、密かにそれを雇主に告げる習慣があって、其のため、教会へ行かない大工の間では、余り評判が好くなかったこともある。
双面獣 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
よつて弟がひ来りしものを視るに、銀色にして上光うはびかり無く、球形にして少しく肌あらし。
鼠頭魚釣り (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
たのみける故七右衞門は委細呑込のみこみ然る上はすけ十郎樣郷右衞門樣とても此方こなたあられては宜しからず御兄弟樣の御供して手前の方へ御越おこしなさるべしとてばん建部たてべ夫婦の者もともに主從都合六人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
筑摩川春ゆく水はすみにけり消て幾日いくかの峯の白雪とは順徳院じゆんとくゐん御製ぎよせいとかおほいなる石の上にて女きぬあらふ波に捲きとられずやと氣遣きづかはる向の岸のかたに此川へ流れ入る流に水車みづぐるま
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
じやがづラクダルさんに試驗しけんをしてもらはなければならぬ、其上でお前に怠惰屋なまけやになるだけの眞實ほんたう力倆りきりやうがあるときまれば、あらためてお前をの人の弟子でしにしてもらふ、如何どうだ、これは?
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
といったかと思うと、伴れている金甲神が、もう刀をいて、周の腹を裂いて、その臓腑をだしてあらって、もとの通りに収め、その上に四角な竹の笠をせ、釘をその四隅に打ったが
歌には「白露重み」とあるから、もっと露を帯びたら帯びたらしい姿をあらわし、これを見る人にもそれがはっきりと判かる様でなければならない理窟ではないか。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
彼は驚きてわが黄なる面を打守りしが、我が眞率なる心や色にあらはれたりけん。
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
あらはに鳳輦ほうれんじゆんを為す
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
花鳥風月、すべて是れ自然が自己をあらはすべき形式たるに過ぎざるを知る。彼れは物質と機関との排列として自然を見る能はず、大なる意味、不思議なる運行を遂ぐる者として之れを見る。
詩人論 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
あらゆる結婚の裏面には両性の一生の雰囲気がまつわつてゐる。
結婚と恋愛 (新字旧仮名) / エマ・ゴールドマン(著)
あらがうことのできぬ権威の前に立たされたような気持で、だまっていた。神妙らしくしているほか、手も足も出ない立場なのだ。
雑居家族 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
表現あらわしているのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
あらい衣をまとあらことばを使ひ、面白くなく、いやしく、行詰つた、すさまじい、これを絵画にして象徴的に現はせば餓鬼がきの草子の中の生物のやうな、或は小説雑話にして空想的に現はせば
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
戦のにわにある猛き軍人の群もあら
天子よりもって庶人に至るまで、一にれ皆身を修むるをもってもとす。その本乱れて末治まる者はあら
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
凡有あらゆる物の混沌の、凡有ゆる物の矛盾の、それら全ての最頂点パラロキシミテに於て、羽目を外して乱痴気騒ぎを演ずるところの愛すべき怪物が、愛すべき王様が、即ちまぎれもなくファルスである。
FARCE に就て (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
二人ふたりが、あらうと、はは
金歯 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あらゆる新流行に対して、その深い原理性を丹念に研究しなくとも直截ちょくせつに感覚からしての適応性優秀性を意識出来でき敏感びんかんさを目立って発達させて来た。
御徒町おかちまち転宅ひっこしまして病気もあらかたなおりました。
「いいえそれにもう一つ、あらい獣に食われますよ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
街上の美人と稱す可き人相フイジオノミイにも出くはさない。立派な店を張つてゐる家の主人や番頭の顏もまだ都會化せられて居ないで、あらい植民地的の相貌を呈して居る。
京阪聞見録 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
と小人の常態つねとて語気たちまち粗暴あらくなり、にべなく言い捨て立たんとするにあわてし十兵衛、ではござりましょうなれど、と半分いう間なく、うるさい、やかましいと打ち消され
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「お互にスツかり缺點あらをさらけ出してしまツたからよ。加之おまけに體力の不平均といふのもかさなる原因になツてゐる。自體女は生理上からツて娼妓しやうぎになツてゐる力のあるものなんだ、お前は殊にうだ!」
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
島原の乱に反徒にくみして城中に在ったが、悔悟して内応を謀り、事あらわれて獄中にとらわれていたが、乱たいらぎたる後ち、伊豆守はこれを赦して江戸に連れ帰り、吉利支丹の目明しとしてこれを用いた。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
「はい、同役とも相談をいたしまして、昨日きのうにもふさごうと思いました、部屋(とたまりの事を云う)のにまたかじりつきますような次第にござります。」と中腰になって、鉄火箸かなひばしで炭をあらけて
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その泣くさまは、青山は枯山なす泣き枯らし河海うみかはことごとに泣きしき。ここを以ちてあらぶる神の音なひ二二狹蠅さばへなす皆滿ち、萬の物のわざはひ悉におこりき。
諸の神たちにせて詔りたまはく、「もし天若日子、みことたがへず、あらぶる神を射つる矢の到れるならば、天若日子になあたりそ。もしきたなき心あらば、天若日子この矢にまがれ一六
おこすべきといかりつ泣つあらさうに番頭久兵衞は左右とかく冷笑あざわらひナニサ其樣に子供だましの泣聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
我家へ連行つれゆきつ何で喧嘩けんくわをなされたと問ばお光は面はゆに物あらそひせしわけならず二個ふたり泪をこぼしてゐたるは斯樣々々の次第なりと婚姻破談はだんに成し事をつゝまず告ればお金は驚きあれ程までに手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
勘次かんじはおしながどうにか始末しまつをしていた麥藁俵むぎわらだはらけて仕上しあげたばかりの藁俵わらだはらこめはかんだ。こめにはあかつぶもあつたがあらすこまじつててそれがつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あらすこしたかゝつたな」勘次かんじはふとさういつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「まア!」と言って妻は真蒼まっさおになった。自分は狼狽あわてふたつの抽斗をき放って中を一々あらためたけれど無いものは無い。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「ハイ確かに百円。渡しましたよ。あらためて下さい」と紙包を自分の前に。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
然しこういう人間は、松井の四人兄弟ばかりでなく、すでに末期相をあらわした頽廃たいはい文化の中には、ほかにも、類型が沢山うごめいていたに違いない。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(進一さんだって、わずかな金——小判一枚のゆきちがいぐらいで、人を叩き倒すような兇暴あら性質たちの人じゃアないから安心だわ)
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「詩に、あらず虎に匪ず、彼の曠野にしたがう、という句があるが覚えているかの。」
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
たヾ一人ひとりありしいもとれと非常ひじやうなかよかりしが、いませてなにもなき、そのいもと姉樣ねえさま正寫そつくりにて、いま在世あらばとこひしさへがたく、お前樣まへさま姉樣ねえさまなればれにはいもとやうおもはれて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あらいところは目につくから——ヘッ、うなぎだと思ってるんだね、小串こぐしのところをやったのでね。性質たち(石の)のいいやつばかりお好みと来たのさ。
じゃ、まあそう可怖おっかなそうにきょろきょろ立っていなくとも好う御座んさあね、お婆さん、誰が知ってるもんですか。それに此方こちとらだってお互に何も弱点あらの拾いっこを
ところがこの形勢が最近に至りまして意外の変化をあらわしはじめたのであります。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
然れども待ちつる情をあらはしまをさずてはいぶせくてえあらじと思ひて、百取の机代物を持たしめて参出でたてまつりき。
枕物狂 (新字旧仮名) / 川田順(著)
これかの尊者の非業の死をあらわすためにこのあさのみ現ずる物の由
なにしろ、御息女は、御寵愛が激しかったので、中老方の嫉妬しっとも多いゆえ、これがあらわれたら、大事にもなろうというもの——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
あらはししめすたふとさよ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
祿兵衞は默つて紙入れを取上げましたが、一通り中をあらためて
広海屋ひろうみやを謀師とした、奉行代官ぶぎょうだいかん浜川平之進、役人横山五助——それからおのが店の子飼いの番頭、三郎兵衛の悪業で、あらゆる術策じゅっさくふるって、手堅さにおいては、長崎一といわれていた
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
四月八日の祭の日に木馬をあらい奉るより外の用には用いざる水であったという(蕉雨雑筆)。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
どっちへ行こうかと森林の中を途方に暮れて見廻した時、またも奇蹟が発現あらわれた。こっちへ来いというように丈なす草が苅り取られ小径が出来ているではないか!
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
冬十月戊辰つちのえたつ己巳つちのとみ、皇子大津謀反むほん発覚あらはれぬ。皇子大津を逮捕とらふ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
ソレを輕々しく益なき事を言行にあらはすと云ふのは、之を喩へば商人が金儲けの事を想像するばかりで、其金をマダ握らぬ中に一寸奢りの眞似をすると云ふ、そんな奴に儲出すことが出來るものか
生来この藻は流水や噴泉で不断あらわるる処に生えるがその胞子が偶然止水中に入ってくるしんだ余り一計を案じ魚に託生してその魚がおよぐとちょうど生活に必要ほどな振動を
れぼつたい一重瞼ひとへまぶたの、丸顔の愛くるしい娘だ。紫のあらしま縒上布よりじやうふの袖の長い単衣ひとへを着て、緋の紋縮緬もんちりめん絎帯くけおび吉弥きちやに結んだのを、内陣ないぢんからりて来た貢さんはうつくしいと思つた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
吾々みたいな粗笨あらっぽい頭では、どこに虚構おちが在るか見当が附かないんだ。そこで止むを得ず受太刀うけだちにまわって、南鮮沿海の漁民五十万の死活に関する所以ゆえんを懇々と説明すると
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一体スウェーデン人はよほど妊婦の心得に注意したと見えて妊婦が鋸台の下を歩けば生まるる子の喉が鋸を挽くように鳴り続け、斑紋ある鳥卵を食えば子の膚あらくて羽を抜き去った鶏の膚のごとし
朝子はあらゆる子供の足跡や玩具おもちゃなどを見ては、何となく胸が迫って、寂しい心持になって行った。
秋は淋しい (新字旧仮名) / 素木しづ(著)
葉公、孔子に語って曰く、吾が党に直躬ちょっきゅうというものあり、その父、羊をぬすみて、子これあらわせり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
それ貴方あなた段々だん/″\詮索あらつて見まするとわたしと少し内縁ひつかゝりやうに思はれます、仮令たとへ身寄みよりでないにもせよ功徳くどくため葬式とむらひだけはわたし引受ひきうけて出してやりたいとぞんじますが
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
……密淫売で洲崎署に十八日くらいこんでいて、今朝の十時にようやく出てきたばかりだったんだからねえ、話にもなにもなりやしないさ。……しかし、南風太郎の身元だけは調あらってきたよ。
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
武蔵は、いずる植物の本能のように、体のうちから外へ向ってあらわれようとしてまないものに、卒然そつぜんと、筋肉がうずいてくるのを覚えた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の両のは、へっぴり腰を立てた酔眼の棟梁を殴りつけていた。交互にぱたぱたと、あられのように、肉の鳴る音がひびくのだ。何かをうめいてげっと俯伏うつぶせになる酔漢の腰をけとばしていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
試みながらも其色を露現あらわさず相も変らぬ静かなる顔付なり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
署長しょちょう顔付かおつきべつであったとかおもって、んでもこれはまち重大じゅうだい犯罪はんざい露顕あらわれたのでそれを至急しきゅう報告ほうこくするのであろうなどとめて、しきりにそれがになってならぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
署長しよちやう顏付かほつきべつつたとかおもつて、んでもれはまち重大ぢゆうだい犯罪はんざい露顯あらはれたのでれを至急しきふ報告はうこくするのであらうなどとめて、しきりにれがになつてならぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
笹村の臆病な冷たい目は、これまでに触れて来た女の非点あらばかりを捜して行った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
……今から一千百余年前、大唐の玄宗皇帝の淫蕩は、青年紳士、呉青秀の忠志に反映して、六体の美人の腐敗像をこの一巻の中に顕現あらわした。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
仮令たとえば、沙魚の餌付は、でも紳士の立食会に、眼を白黒してき合ひ、豚のあらしゃぶる如く、鮒は妙齢のお嬢さんが、床の間つきのお座敷に座り、口を細めて甘気の物を召し上る如く
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)