あら)” の例文
お君は泣き顏を振りあげて、必死とあらがひますが、寅松はセセラ笑つてその丸い肩を小突き乍ら、袂の捕繩を左手で爪搜まさぐるのです。
あらがうことのできぬ権威の前に立たされたような気持で、だまっていた。神妙らしくしているほか、手も足も出ない立場なのだ。
雑居家族 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
自分の品位をあらがいがたく意識し、身体の向きを変えるたびにお下げを振りながら、あちこちと早足で歩き廻り、ビールをもってきて、つぎにインクとペンとをもってきた。
(新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)