鴛鴦をしどり)” の例文
「そんな氣樂なものぢやありませんよ。鴛鴦をしどりのやうに仲よく添寢してゐる夫が、夜中に脱け出して人を殺すでせうか——ツて」
しかもその空席のあるのは丁度ちやうど僕の右鄰みぎどおりである。さぎねえさん相当にそつと右鄰へ腰を下した。鴛鴦をしどりは勿論あねの前のり革に片手を托してゐる。
鷺と鴛鴦 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あゝ、あの、手遊てあそびの青首あをくびかもだ、とると、つゞいて、さまそでしたけたのは、黄色きいろに、艶々つや/\とした鴛鴦をしどりである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大椋おほくらの池にうかるる鴛鴦をしどりのをしき月日をいたづらに経ぬ
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
かげ寒き池の水面みのもやつれづれと家鴨あひるおよげり鴛鴦をしどりを前に
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
鴛鴦をしどりや国師のくつも錦革
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
鴛鴦をしどりひし蒸衾むしぶすま
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
徐大盡じよだいじん眞前まつさきに、ぞろ/\とはひると、くらむやうな一面いちめんはじ緋葉もみぢもゆるがごとなかに、紺青こんじやうみづあつて、鴛鴦をしどりがする/\と白銀しろがねながしてうかぶ。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
中肉ちうにく以上に肥つてゐる。けれども体のり合ひは少しもその為に損はれてゐない。殊に腰を振るやうに悠々と足を運ぶ容子ようす鴛鴦をしどりのやうに立派りつぱである。
鷺と鴛鴦 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かげ寒き池の水面みのもやつれづれと家鴨あひるおよげり鴛鴦をしどりを前に
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
鴛鴦をしどり濃艷のうえんでおむつまじい、が、いたばかりで、翡翠かはせみ凄麗せいれいにして、所帶しよたい意氣いきである。たくなつた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鴛鴦をしどりさぎよりも幾分か器量は悪いかも知れない。僕はそれぎりこの二人を忘れ、ぶらぶら往来わうらいを歩いて行つた。往来は前にも云つた通り、夏の日の照りつけた銀座である。
鷺と鴛鴦 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
湯崗子遠く来りてあはれあはれ鴛鴦をしどりの湯にひとり浸るも
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
こずゑの雪に鴛鴦をしどり
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
鴛鴦をしどり
動物園 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)