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飼鳥
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かひどり
「さればにて
候、
別段是と
申して
君に
勸め
奉るほどのものも
候はねど
不圖思附きたるは
飼鳥に
候、
彼を
遊ばして
御覽候へ」といふ。
筑紫の、
櫨の
木原、木原には
夕光満ち、夕光に
鷽鳥啼けり。宰府道、ここの木原に、
飼鳥の、よき
鷽鳥を、もつ
家あらしも。
斯る
風聞聞えなば、
一家中は
謂ふに
及ばず、
領分内の
百姓まで
皆汝に
鑑みて、
飼鳥の
遊戲自然止むべし。
「いかにも
堪難く
候、
飼鳥をお
勸め
申せしは
私一世の
過失、
御宥免ありたし」と
只管にわび
奉りぬ。
其夜の
雁も
立去らず、
餌にかはれた
飼鳥のやう、よくなつき、
分けて
民子に
慕ひ
寄つて、
膳の
傍に
羽を
休めるやうになると、はじめに
生命がけ
恐しく
思ひしだけ、
可愛さは
一入なり。