風儀ふうぎ)” の例文
生徒の風儀ふうぎは、教師の感化で正していかなくてはならん、その一着手として、教師はなるべく飲食店などに出入しゅつにゅうしない事にしたい。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
厭世と禁慾とがこの教団のまた魅力でもあった。教団が流行らない初めの頃は何とおきてをしないでも男女の間の風儀ふうぎは乱れなかった。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
子弟を学塾に入れ或は他国に遊学せしむる者ありて、文武の風儀ふうぎにわかに面目めんもくを改め、また先きの算筆のみにやすんぜざる者多し。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いわゆる、御番衆ごばんしゅうというと、いったいに、風儀ふうぎの悪い方だが、江戸城でも、書院詰しょいんづめのものだけは、悪風に染まず、品行が正しいといわれている。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、前にも言うとおり、この辺は風儀ふうぎの悪いところで、真夜中にこんな光景を見るのは珍らしいことではなかった。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
猫間川ねこまがはきし柳櫻やなぎさくらゑたくらゐでは、大鹽おほしほ亡魂ばうこんうかばれますまい。しかし殿樣とのさま御勤務役ごきんむやくになりましてから、市中しちう風儀ふうぎは、ちがへるほどあらたまりました。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「おじいさん、このごろは、風儀ふうぎがわるくなりまして、着物きものや、げたや、せっけんまで、とられるので、だれも、いいふうなどして、おへいくものは、ございません。」
かたい大きな手 (新字新仮名) / 小川未明(著)
風儀ふうぎの悪いところでは子供の時からこれぐらい厳重にして置く必要があるんだろうね」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
積荷を奪ったあげく船を沈めるという風儀ふうぎで、平穏無事な航海はいたって少ない。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
おさへ少し辛抱しんばうして居らるゝと屹度きつと出世しゆつせも出來まする其御邸と申のは至つて風儀ふうぎよいとの事傍輩衆はうばいしうも大勢有て御奇麗きれいずきの方々ゆゑ毎日朝から化粧つくろひが御奉公安心なる物なりと口から出次第でしだい喋舌立しやべりたてるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これは先生を侮辱ぶじょくした訳ではありません、また先生に見せるためにわざわざ遣ったのでもありませんが、とにかくよほど予備門などにおったわれわれ時代の書生の風儀ふうぎは乱暴でありました。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
往來わうらい煙草たばこつたもの、なかひと退けてすゝまうとしたもの、そんなのまでをとらへて、打首うちくびにするならば、火事くわじ半分はんぶんげんずるし、なか風儀ふうぎたちまあらたまるであらうとおもつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)