頂上てっぺん)” の例文
みんなは胸をおどらせて山の頂上てっぺんにやって行きました。猿はもう赤い蝋燭を木の枝にくくりつけてみんなの来るのを待っていました。
赤い蝋燭 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
頭の頂上てっぺんにチクチク痛んでいる小さな打ちきずが、いつ、どこで、どうして出来たのかイクラ考えても思い出し得ないのであった。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
土塀の頂上てっぺんで腹這いになり、家内やうちの様子を窺ったが、樹木森々たる奥庭には、燈籠のがともっているばかり、人の居るらしい気勢けはいもなかった。
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そのうちに友達はついに自殺をしました。早速さっそく私共も行きましたが、千葉の勝浦の権現堂ごんげんどうのある山の頂上てっぺんで死んでいました。
きょうの趙七爺は以前のような道士ではない。つるつるとして頭の皮の頂上てっぺんに、真黒な髪の毛があるのを早くも認めた。
風波 (新字新仮名) / 魯迅(著)
麦藁帽子をかぶらせたら頂上てっぺんおどりを踊りそうなビリケンあたまが入っていて、これも一分苅ではない一分生えの髪に、厚皮あつかわらしい赭いが透いて見えた。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そのとうは、梯子はしごければ、出口でぐちく、ただ頂上てっぺんに、ちいさなまどが一つあるぎりでした。魔女まじょはいろうとおもときには、とうしたって、おおきなこえでこううのです。
腰がびないほどうずいたけれ共、お金の思わくを察して、堪えて水仕事まで仕て居たけれ共、しまいには、眼の裏が燃える様に熱くて、手足はすくみ、頭の頂上てっぺんから
栄蔵の死 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
こちらは足の掛りもないほど急で、頂上てっぺんから下を見ると眼も眩むばかり幾十万丈とも知れぬ深さだ。
月世界跋渉記 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
平時いつもと違って、妙に胸がどきつくのさ。頭の頂上てっぺん円髷まるまげをちょんと乗せた罪の無いお鹿の女房が、寂寞ひっそりした中へお客だから、喜んで莞爾々々にこにこするのさえ、どうやら意見でもしそうでならない。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぐらつく頂上てっぺんから芋虫の様に転落した仲間
サガレンの浮浪者 (新字新仮名) / 広海大治(著)
「それなら、今晩山の頂上てっぺんに行ってあそこで打上げて見よう」と猿がいいました。みんなは大へん喜びました。
赤い蝋燭 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
諸仏菩薩もお許しあれ、生雲塔の頂上てっぺんより直ちに飛んで身を捨てん、投ぐる五尺の皮嚢かわぶくろやぶれて醜かるべきも、きたなきものを盛ってはおらず、あわれ男児おとこ醇粋いっぽんぎ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
若々しい鋭い元気のよい声で「ヤッ」と一声かけたかと思うと手掛かりもない塀の面をスーッと頂上てっぺんまで駈け上がったがそこでぐるりと振り返り、きわめて劇的の身振りをすると
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人さし指中指の二本でややもすれば兜背形とっぱいなり頭顱あたま頂上てっぺんく癖ある手をも法衣ころもの袖に殊勝くさく隠蔽かくし居るに、源太もうやまつつしんで承知の旨を頭下げつつ答えけるが
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と、公孫樹の頂上てっぺんから、何やらスーッとりて来た。それは小さな鳥籠であった。
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、忽然蔓の頂上てっぺんへ、笠ほどの大きさの花が咲いた。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)