雛様ひなさま)” の例文
好者すきものとなってみると、お雛様ひなさま飯事ままごとのようなことばっかりしていたんでは納まらない、そういう図々しいことをしてみたがるんです。
お夏さんは飛んだそのとりを可愛がってます。それから母上おっかさんはいうまでもありませんが、生命いのちがけで大事にしているお雛様ひなさまがありますよ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ゆかしいお家流で「お雛様ひなさま」だとか「五人囃子ばやし」だとか「三人上戸じょうご」だとか、書きしるしてある、雛人形の箱でございました。
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
父が御診察に伺った時、飾ったお雛様ひなさまを拝見して来て、「実に見事なものだよ。御願いして置いたから拝見におで」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
それこそお雛様ひなさま女夫みょうとのような一対の美しい夫婦が出来ると、師匠も家にいてその事を妻君などに話し、どうか、この縁はまとめて見たいものだ、といっておられました。
いくらでも食べられるだろう。西洋人の家で御馳走になってみ給え、品数が多くって分量の少いことお雛様ひなさまのお膳の如し。それにビフテキでもシチュウでも肉が少くって野菜が多い。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
十七日は最終の晩だというので、よいのうちは宿の池のほとりで仕掛け花火があったりした。別荘の令嬢たちも踊り出て中には振袖姿ふりそですがた雛様ひなさまのようなのもあった。見物人もおおぜい集まって来た。
沓掛より (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
歯齦はぐきの血で描いたお雛様ひなさまの掛軸——(女子大学卒業生作)
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
後の節句にも、お雛様ひなさまに進ぜさした、振出しの、有平あるへい、金米糖でさえ、その可愛らしいお口よごしじゃろうに、山家やまが在所のしいの実一つ、こんなもの。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
雛様ひなさまの花びん
智恵の一太郎 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
温泉場をんせんば普請ふしんでもときには、下手へた大工だいく真似まねもする。ひまにはどぜうしやくつてくらすだが、祖父殿おんぢいどんは、繁昌はんじやうでの、藩主様とのさま奥御殿おくごてんの、お雛様ひなさまこさへさしたと……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何でも徳川様瓦解がかいの時分に、父様おとっさんの方は上野へへえんなすって、お前、お嬢さんが可哀かわいそうにお邸の前へ茣蓙ござを敷いて、蒔絵まきえの重箱だの、お雛様ひなさまだの、錦絵にしきえだのを売ってござった
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(いいえ、お雛様ひなさまが遊ぶんでしょう。ちょうどこの上あたりで聞えるんですもの、そうして、こんな細い、小さなのするのは五人囃子が持っている、かわいい笛でなくッてさ。)
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)