鉄桶てっとう)” の例文
旧字:鐵桶
夷陵の城はおけの如く敵勢に囲まれている。誰かその鉄桶てっとうの中へ入って、城中の甘寧と聯絡をとる勇士はないか——と周瑜がいうと
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌る六月一日、八丁堀組屋敷は早暁から門外を堅め、与力同心組子の数を尽して、真に鉄桶てっとうの人垣を作りました。
ある建具はやぶれた此の野中の一つ家と云った様な小さな草葺くさぶきを目がけて日暮れがたから鉄桶てっとうの如く包囲ほういしつゝずうと押寄おしよせて来る武蔵野のさむさ骨身ほねみにしみてあじわった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
すでに彼の四方は鉄桶てっとうのごとき兵士で取り囲まれていた。その中には、顔もよく知っている副官陸謙の姿も見える。林冲は、それへ向って
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこには、佐々方の諸将が、瀕死ひんしの孤城をとりつめて、水ももらさぬ鉄桶てっとうの陣を作っていた。当然、一角に激戦が起った。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
関羽は、矢倉へのぼった。そして古城の外をながめた。愕くべし満地の山川ことごとく呉旗呉兵と化している。いわゆる蟻も通さぬ鉄桶てっとうの囲いである。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あだかも四面鉄桶てっとうの乱軍を駆けくずし、その悉くを槍にかけて、宙に大地に、突き投げ突き伏せてまざるかのような大演技を演じて見せたのである。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに本能寺は、敵の鉄桶てっとうの内であり、信長の一身を、絶望のほかなきものと、春長軒父子おやこから聞いて、信忠は
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄弟のまわりは敵兵の鉄桶てっとうっている。無数の槍とやいばのしぶきをかぶって、土屋兄弟は、華々しい死を果した。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほか遊撃隊の五百、三百、あるいは百ぐらいな侍によってなる、いわゆる無数な小隊の鉄桶てっとうだった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
万寿ののどに短刀をしながら、あたりを睥睨へいげいしている異様な敵人のまわりには——文字どおり甲冑かっちゅうの「鉄桶てっとう」ができて——それも藤吉郎の手もととまなざしを恐れてか
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、多勢に無勢、無念っ——の声は敢えなく鉄桶てっとうの敵にへだてられてしまった。三河守は、怒れる眼に血をそそいで、いまはこれまでと、見えたが、血路に天を仰いで
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孟獲は胆を消して、渓流を跳び、沢を駈け、さながら美しき猛獣が最期を知るときのように逃げまわったが、すでに四山は蜀兵の鉄桶てっとうと化し、のがるべくもない有様であった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とばかり袁紹のまわりには、旗本の面々が、鉄桶てっとうの如く集まって、これを守り固めるやら
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諏訪飛騨守すわひだのかみ御牧みまき三左衛門、荒木山城守、四方田但馬守しほうでんたじまのかみ、村上和泉守いずみのかみ三宅みやけ式部、そのほか幹部たちのおびただしい甲冑かっちゅうの影が幾重にも光秀を囲んで、鉄桶てっとうのごときものを作っていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「京の内外、鉄桶てっとうのごときこの警戒には、さしもたくんでいた残党どもも、ついに手も足も出せずに終ったものとみえる。したがまだ、あす、あさって、くれぐれお抜かりなきように」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし将監は、死に物狂いに血路をひらき、遂に、鉄桶てっとうから脱出した。そして二里ほどはしると、かねてしめし合わせておいた佐久間安政の軍が昨夜から野営して待機しているのと出会った。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三成の軍は、もう鉄桶てっとうの如く、細川家をとり巻いて、ときの声をあげ初めた。
また東南たつみよりは徐晃じょこうの騎馬隊、西南よりは楽進がくしん弩弓隊どきゅうたい、東北よりは夏侯惇かこうじゅんの舞刀隊、西北いぬいよりは夏侯淵の飛槍隊など、八面鉄桶てっとうかたちをなしてその勢無慮むりょ十数万——その何十分の一にも足らない張飛
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兵は鉄桶てっとうの如く、曹操を取り囲んで、吟味所へらっしてしまった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人を鉄桶てっとうの内に取り囲んで、近づけもさせなかったのである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)