わる)” の例文
「美い女——君にはどうして、いい女か、わるい女か、それがわかる、まあ、いいや、勘でわかるとして置いて、事実、女もああなるとすごいね」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
どこがいいと明らかに指すことが出来れば、どこがわるいということもまた明らかに指すことが出来る、すでに醜い所を指すことが出来ればそれでもほれると云う理は無い。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
又「お前、何でわしが是程まで惚れたに愛想尽しを云って、年を取って男はわるくも、それ程まで思うてくれるか憫然ふびんな人というじょうがなければ成らぬが何んで其の様に憎いかえ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
見た時、宮はうるおいのないわるいお顔のようにお見えになった。別々に見れば優劣はない方がたのように見えるのだけれど、美しい人というものは一方の美をそこねるものだから困るのね
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
大自然だいしぜんの、悠然いうぜんとして、つちみづあたらしくきよ目覺めざむるにたいして、欠伸あくびをし、はならし、ひげき、よだれつて、うよ/\とたなかひこうごめづる有状ありさまは、わる見窄みすぼらしいものであるが
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
え……本当なればわたしかゝあを追ひ出しちまひます、へえ鎧橋よろひばし味噌漉提みそこしさげよりわるいてえひどい顔で、ぐにさらけだしちまひます、あなたと三でもいから一しよいね。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「その問題が、それ、机竜之助はい男か、わるい男かという問題なのよ」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは貴方あんた、色恋の道は顔や姿のものじゃアねえ、年が違うのも、自分のわるい器量も忘れてしまって、お千代へばかり念をかけて、ることも出来ず、毎晩夢にまで見るような訳で
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
大屋が云っても差配人が苦情を鳴らしても何うでもしますから宜しいではありませんか、貴方心配はございませんお出でなさい、ちょいと、まんざらわるい男でもございますまい、ようがしょう様子が
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)