那麽あんな)” の例文
一番最初しょっぱなに行ったのは「自惚かがみ」君の家であった。先生店に鯱構しゃちかまえていた。乃公は大人になっても那麽あんな鬚ははやしたくないと思った。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
感情が粗雜で稚氣があつて、ひとりで感激してると言つた樣な詩なんでさ。新時代の青年が那麽あんな古いものを崇拜してちや爲樣が無いね。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
いや悲しいといふよりは癪に障つたよ。何といふのかな、那麽あんな具合で到頭埋もれて了ふのを。平凡の悲劇とでも言ふのかな……。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
乃公おれは伯母さんが那麽あんなに憤るだろうとは思わなかった。伯母さんは火のようになって、直様すぐさま鞄を抱えて、階下したへ下りた。そして車屋を呼んで来て下さいと言った。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
『君はまだ那麽あんな声を聞かうとするだけ若い。僕なんかは其麽そんな暇はない。聞えても成るべく聞かぬ様にしてる。ひとの事よりア此方こつちの事だもの。』
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
誰が好き好んで若い身空を那麽あんなところへくものですか。お母さんだって若い時の記憶おぼえもありましょうに、真正ほんとうに少しは私の身になって考えて呉れてもさそうなものだ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
此反對な二人の莫迦に親密なかよしなのは、他の娘共から常に怪まれてゐた位で、また半分は嫉妬氣味から、「那麽あんな阿婆摺あばづれと一緒にならねえ方がえす。」
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼女の挙動やうすはまだ男を知つて居ないらしいが、那麽あんなに若く見える癖に二十二だつていふから、もう男の肌に触れてるかも知れぬ。それも構はんさ。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
那麽あんな小い人も滅多にありませんねえ、うちぢや小供らが、誰が教へたでもないのに三尺さんといふ綽名あだなをつけましてね。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『森川さんの憎いつたらありやしない。那麽あんなに亂暴しなくたつて可いのに、到頭「聲きく時」をいちまつた……。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『森川さんの憎いツたらありやしない。那麽あんなに乱暴しなくたつていいのに、到頭「声きく時」を裂いツちまつた。……』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お八重は又自分を迎ひに來て呉れた時の新太郎の事を語つて、『那麽あんな親切な人アの方にやえす。』と讃めた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
お八重は又、自分を迎ひに来て呉れた時の新太郎の事を語つて『那麽あんな親切な人アの方にやえす。』と讃めた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『ハッハヽヽ。怎うですか知りませんが、那麽あんなに生れついちやお氣の毒なもんですね。顏だつても綺麗だし、話して見ても色ンな事を知つてますが……。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
してお定は、以後先これからさき、怎して那麽あんな滑かな言葉を習つたもんだらうと、心細くなつて、お吉の顔が自分等の方に向くと、また何か問はれる事と気が気でない。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「先生は不具者かたはや乞食に惡口をいてはいけないと言つたのに、豐吉は那麽あんな事をしたのだから、たとひ豐吉が一番で私が二番でも、私より豐吉の方が惡い人だ。」
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
してお定は、これから、どうして那麽あんななめらかな言葉を習つたもんだらうと、心細くなつて、お吉の顏が自分等の方に向くと、また何か問はれる事と氣が氣でない。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「先生は不具者かたはや乞食に悪口を利いては不可ないと言つたのに、豊吉は那麽あんな事をしたのだから、たとひ豊吉が一番で私が二番でも、私より豊吉の方が悪い人だ。」
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「溝の中を歩く人。」と口の中で云つて、私は思はず微笑につこりした。それに違ひない、アノ洋服の色は、えた、腐つた、溝の中の汚水の臭気で那麽あんなに変色したのだ。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それに違ひない、アノ洋服の色は、えた、腐つた、溝の中の汚水の臭氣で那麽あんなに變色したのだ。手! アノ節くれ立つた、恐ろしい手も、溝の中を歩いた證據だ。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
垢だらけの胸をはだけて乳をやる母親は、鼻が推潰した樣で、土に染みた髮は異な臭氣を放つて居たが、……噫、淺間しいもんだ那麽あんな時でも那麽あんな氣を、と思ふと其をつと
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
垢だらけの胸をはだけて乳をやる母親は、鼻が推潰おしつぶした様で、土に染みた髪は異な臭気を放つて居たが、……噫、浅間しいもんだ、那麽あんな時でも那麽気を、と思ふと其をつと
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
末は怎でも今は俺のもんさ、彼女の擧動はまだ男を知つて居ないらしいが、那麽あんなに若く見える癖に二十二だつていふから、もう男の肌に觸れてるかも知れぬ。それも構はんさ。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『そんなら可いけど、此間も眞佐アちやんの繪具を那麽あんなにして了うたぢやありませんか』
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そんなら可いけれど、此間こなひだも真佐アちやんの絵具を那麽あんなにして了うたぢやありませんか?
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
馬鹿な、マアどうでも可いさと口に出して呟いたが、何故なぜ那麽あんな事云つたらうとた考へる。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
馬鹿な、マアどうでも可いさと口に出して呟いたが、何故那麽あんな事を云つたらうとまた考へる。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
那麽あんな男なら、何人先方あつちで入れても安心だよ。何日いつだツたか、其菊池が、記者なり小使なりに使つて呉れツて、俺の所へ來た事があるんだ。可哀相だから入れようと思つたがね。』
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
那麽あんな男なら、何人先方むかうで入れても安心だよ。何日いつだツたか、其菊池が、記者なり小使なりに使つて呉れツて、俺の所へ来た事があるんだ。可哀相だから入れようと思つたがね、』
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『モウ起きなさいよ、十一時がつたから。那麽あんなに寢てて、貴方何考へてるだべさ。』
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
妙に母をあはれむ様な気持になつて、若し那麽あんな事を叔父の顔を見る度に言つて、万一叔父が怒る様な事があつたら、母は奈何どうする積りだらうと、何だか母の思慮の足らないのが歯痒くて
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
私の母は、何時でも「那麽あんな無精な女もないもんだ。」と叔母を悪く言ひながら、それでも猶何ににつけて世話する事を、怠らなかつた。或時は父にかくしてまでも実家さとの窮状を援けた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
此反対な二人の莫迦ばか親密なかよしなのは、他の娘共から常に怪まれてゐた位で、また半分は嫉妬やきもち気味から、「那麽あんな阿婆摺あばずれと一緒にならねえ方がえす。」と、態々わざわざお定に忠告する者もあつた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
何番のお客さんが昨晩這麽こんな事を云つたとか、那麽あんな事をしたとか、誰さんが私の乳を握つたとか、夏になつたら浴衣を買つてやるから毎晩泊りに来いと云つたとか、それは/\種々いろんな事を喋り立てる。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
なあ、君、那麽あんなえらい馬が内地になんか一疋だツて居るもんか。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
なあ、君、那麽あんなえらい馬が内地になんか一疋だツて居るもんか。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『島田さん、もう那麽あんな繪葉書無くつて?』
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『島田さん、もう那麽あんな絵葉書無くつて?』
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)