透彫すかしぼり)” の例文
……ふた黄金無垢きんむくの雲の高彫に、千羽鶴を透彫すかしぼりにして、一方の波へ、毛彫のさえで、月の影をさっと映そうというのだそうですから。……
西欧のあの中世紀において、工人たちはあの美しい絵硝子えガラスやまたは透彫すかしぼりの窓枠に、彼らの名をいちいち刻んだであろうか。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
もっともこれは関西の式といってもよく、大津や大阪あたりまで見られます。引戸や小引出の多いもので、しばしばその横桟よこざんには透彫すかしぼりを施します。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
雪の襟脚、黒髪と水際立って、銀の平打ひらうちかんざし透彫すかしぼりの紋所、撫子なでしこの露も垂れそう。後毛おくれげもない結立ての島田まげ、背高く見ゆる衣紋えもんつき、備わった品のさ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白木しらきのものを別として塗は拭漆のもの多く稀には墨漆すみうるし朱漆しゅうるし。しばしば特殊な衣裳いしょうをこらしてある。透彫すかしぼり浮彫うきぼりや、また線彫せんぼりや、模様もまた多種である。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
この時までたしなんで持っていたか、懐中鏡やら鼈甲べっこう透彫すかしぼりの金蒔絵まきえ挿櫛さしぐしやら、あたりちらばった懐紙の中には、見覚みおぼえのある繿縷錦つづれにしきの紙入も、落交おちまじって狼藉ろうぜき極まる
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
莞爾にっこと笑み、はじめて瞳を座敷に転じて、島田の一にぐいとさした、撫子なでしこの花を透彫すかしぼりの、銀の平打が身じろぎに、やや抜け出したのを挿込みながら、四辺あたりながめて
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いざ、金銀きんぎんあふぎつてふよとれば、圓髷まげをんな、なよやかにすらりときて、年下としした島田しまだびんのほつれを、透彫すかしぼりくしに、掻撫かいなでつ。心憎こゝろにくし。かねつたふらく、ふね深川ふかがは木場きばかへる。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)