)” の例文
「狭いんで驚いちゃ、シキへは一足ひとあしだってめっこはねえ。おかのように地面はねえとこだくらいは、どんな頓珍漢とんちんかんだって知ってるはずだ」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
または土足のまま茶屋の囲炉裏いろりばたに踏んんで木曾風きそふうな「めんぱ」(木製割籠わりご)を取り出す人足なぞの話にまで耳を傾けるのを楽しみにした。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「君達も今は劇は芸術だからつて、高くとまつてゐるが、芝居に足をむだ抑々そも/\は、まさか芸術家になつてみたいと思つた訳でも無かつたらう。」
「その時は、俺がんで一太刀よ。お前の仕事にはずれはあっても、投げ槍小六の腕に狂いはないから安心しろ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
業を煮やした警部補が、サッと手を振って合図すると一緒に七八人のガチャが、田へ一足、二足ふんんで来た。
共同耕作 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
かまわねえから、姐御あねご! 踏んみなせえ、踏ん込みなせえ! 毒蛇コブラ様の眼は、ダテに付いちゃアいねえんだから
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
さっきもおれアうっかり踏んむと、殺しに来たと思いやがったンだね、いきなりおけの後ろから抜剣ぬきみ清兵やつが飛び出しやがって、おいらアもうちっとで娑婆しゃばにお別れよ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
取りあえずそのはや挙動ふるまいとどめておいて、さておおいに踏んんでもこの可憫あわれな児を危い道をませずに人にしてやりたいと思い、その娘のお浪はまたただ何と無く源三を好くのと
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
林「この親爺、何処どこまでとぼける積りだ、えゝ面倒だ、金藏きんぞう踏んめ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ウン、そうかも知れん。戸を破ってんで見よう」
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「うん悪くはねえ、ひとつその意気で踏んもうぜ」
まずかさを脱いで炉ばたに足を休めようとしたのは景蔵だ。香蔵も半蔵も草鞋わらじばきのままそのそばにふんんで、雪にぬれた足袋たびの先をあたためようとした。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私はぼんやりお嬢さんの頭を見ていましたが、次の瞬間に、どっちかみちを譲らなければならないのだという事に気が付きました。私は思い切ってどろどろの中へ片足みました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「面倒くせえッ、せいたか! 楽屋へ踏んんじまえ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平素なら兼吉、桑作共に土足で来て踏ンむところであるが、その朝は手ぐいで足をはたいて、二人とも半蔵の前にかしこまった。もとよりふるい主従のような関係の間柄である。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
シキへほうり込まれるには若過ぎるよ。ここは人間のくずが抛り込まれる所だ。全く人間の墓所はかしょだ。生きてほうぶられる所だ。一度んだが最後、どんな立派な人間でも、出られっこのない陥穽おとしあなだ。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)