踏入ふみい)” の例文
彼はまた不安な表情をして考えにしずんだ。彼は今までに一度も埃及に足を踏入ふみいれたこともなく、埃及人と交際をもったこともなかったのである。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それから三代目だいめ代目だいめとは、無關係むくわんけいで、構内こうないへは一あし踏入ふみいれなかつたが、到頭たう/\その鷄屋とりやほろびてしまつたので、これをさいはひと佛骨子ぶつこつしをかたらひ、またすこつてた。
其處そここの鐵車てつしやつて、朝日島あさひじまきざんだ紀念塔きねんたうたづさへて、此處こゝから三十ぐらいの深山しんざん踏入ふみいつて、猛獸まうじう毒蛇どくじや眞中まんなかへ、その紀念塔きねんたうてゝるのだ、んと巧妙うま工夫くふうではありませぬか。
友人久米くめ君から突然有馬の屋敷跡には名高い猫騒動の古塚ふるづかが今だに残っているという事だから尋ねて見たらばと注意されて、私は慶応義塾けいおうぎじゅくの帰りがけ始めて久米君とこの閑地へ日和下駄を踏入ふみいれた。
またやさしい処のあるは真に是が本当の女で、かる娘は容易に無いととうから惚込んで、看病をする内にも度々たび/\起る煩悩を断切り/\公案をしては此の念を払って居りましたが、今はまよいの道に踏入ふみいって
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
はツとおもつたが、仕方しかたい。すでに一横穴よこあな踏入ふみいれてるのだ。