足駄穿あしだばき)” の例文
一瀬ひとせひくたきさつくだいて、さわやかにちてながるゝ、桂川かつらがは溪流けいりうを、石疊いしだたみいたみづうへせきなかばまで、足駄穿あしだばきわたつてて、貸浴衣かしゆかたしりからげ。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
足駄穿あしだばきで雨傘を提げて電車に乗ったが、一方の窓が締め切ってある上に、革紐かわひもにぶら下がっている人が一杯なので、しばらくすると胸がむかついて、頭が重くなった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白足袋で、黒の爪皮つまかわを深く掛けた小さく高い足駄穿あしだばきで、花崗石みかげいしの上を小刻こきざみの音、からからと二足三足。つむりが軒の下を放れたと思うと、腰をして、打仰いで空を見た。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
定刻ていこくになつて、代助は出掛でかけた。足駄穿あしだばき雨傘あまがさげて電車につたが、一方のまどつてあるうへに、革紐かはひもにぶらがつてゐるひとが一杯なので、しばらくするとむねがむかついて、あたまおもくなつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いかにも大木たいぼくたふれたのがくさがくれにみきをあらはしてる、ると足駄穿あしだばき差支さしつかへがない、丸木まるきだけれども可恐おそろしくふといので、もつともこれをわたてるとたちまながれおとみゝげきした
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いかにも大木のたおれたのが草がくれにその幹をあらわしている、乗ると足駄穿あしだばき差支さしつかえがない、丸木だけれどもおそろしく太いので、もっともこれを渡り果てるとたちまちながれの音が耳にげきした
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
足駄穿あしだばき尻端折しりっぱしょりで、出会頭であいがしらに、これはと、頬被ほおかぶりを取った顔を見ると、したり、可心が金沢で見知越みしりごしの、いま尋ねようとして、見合わせた酒造家の、これは兄ごで、見舞に行った帰途かえりだというのです。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)