さめ)” の例文
旧字:
そりゃもう、先生の御意見で夢がさめましたから、生れ代りましたように、魂を入替えて、これから修行と思いましたに、人は怨みません。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
只さえ人並勝れた美人、髪の出来たて、化粧のしたて、衣類も極々ごく/\上品な物を選みましたので、いや綺麗のなんの眼がさめるような美人であります。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
三四郎は、とらはれた儘、さからはずに、寐たりさめたりするあひだに、自然にしたがふ一種の快感を得た。病症がかるいからだと思つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
けれども、その扇形をした穹窿きゅうりゅうの下には、依然中世的好尚が失われていなかった。楽人はことごとく仮髪かつらを附け、それに眼がさめるような、朱色の衣裳を着ているのである。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
一寝ひとねして目がさめると云うのが今で云えば十時か十時過、それからヒョイと起きて書を読む。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
神明かの男が実心まごゝろあはれみ、人々のいのりをも納受なふじゆまし/\けん、かの娘目のさめたるがごとくおきあがり母をよびければ、みな奇異きゐのおもひをなし、むすめのそばにあつまりていかに/\といふ。
思いつつればや人の見えつらん夢と知りせばさめざらまじを、大原は昨夜ゆうべの夢のうつつのこしひとり嬉し顔に朝早く臥戸ふしど洗面場せんめんばいたりてその帰りに隣室の前をすぎけるに、隣室に下宿せる大学の書生二
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
さめて過去の背中に夢を彫る
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
何ういう人を亭主に持ちおると思ってる内に、旦那さまのお妾さまだと聞きやしたから、よんどころねえと諦らめてるようなものゝ、てもさめてもおまえさんの事を忘れたことアないよ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
立花は涙も出ず、声も出ず、いうまでもないが、幾年月いくとしつき、寝てもさめても、夢に、うつつに、くりかえしくりかえしいかに考えても、また逢う時にいい出づべきことばいまだ知らずにいたから。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)