西湖せいこ)” の例文
支那に遊んで杭州の西湖せいこへ往った者は、その北岸の山の上と南岸の湖縁こべりとに五層となった高い大きな塔の聳えているのを見るであろう。
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
漢青年は、気がつくと、いつの間にか窓辺まどべによっていた。そこから、西湖せいこの風光が懐しく彼の心を打った。こうして、漢青年の幻想生活が始まった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたしはK君と、シナの杭州、かの西湖せいこのほとりの楼外楼ろうがいろうという飯館はんかんで、シナのひる飯を食い、シナの酒を飲んだ。
女侠伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……ところが昨年のこと、徽宗きそう皇帝が、万歳山ばんざいさんの離宮にお庭作りを営まれるに当って、制使十名を、西湖せいこへご派遣になり、西湖の名石めいせきをたくさん、都へ運ばせることになった
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秦淮しんわいには驚いたね。さようさ。幅が広い処で六間もあろうか。まあ、六間幅のどぶだね。その水のきたないことおびただしい。それから見ると、西湖せいこの方はとにかく湖水らしい。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
玄關へ横付よこづけにせられ西湖せいこの間にて將軍に御對顏たいがんあらばお沓はお用ひなしゆゑに宮樣と宰相とは主從しゆじうの如くなれど今少し官位の相違さうゐあらんかと答へらる越前守是をきかれ然らば天一坊を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
破れたまがきの前に座して野菊と語った陶淵明とうえんめいや、たそがれに、西湖せいこの梅花の間を逍遙しょうようしながら、暗香浮動の趣に我れを忘れた林和靖りんかせいのごとく、花の生まれ故郷に花をたずねる人々である。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
彼は一つうなづくと素早すばやく、西湖せいこを望む窓辺に駈けより、重い花壜かびん※止はっしとなげつけた。ガタリという物音がして、西湖の空のあたりが、二つに裂けて倒れた。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その彭は、ある日西湖せいこの縁を歩いていた。それは夏の夕方のことで、水の中では葉を捲いていた蓮の葉に涼しい風が吹いて、ぎらぎらする夕陽の光も冷たくなっていた。
荷花公主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
御紋ごもん唐草からくさ蒔繪まきゑ晴天せいてんに候へば青貝柄あをかひえの打物に候大手迄は御譜代ふだい在江戸の大名方出迎でむかへ御中尺迄ちうしやくまでは尾州紀州水戸の御三方さんかたの御出迎でむかひにて御玄關げんくわんより御通り遊ばし御白書院おんしろしよゐんに於て公方樣くばうさま對顏たいがん夫より御黒書院くろしよゐんに於て御臺みだい樣御對顏ふたゝ西湖せいこの間に於て御三方樣御さかづき事あり夫より西の丸へ入せられ候御事にて御たかの儀は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
支那の杭州こうしゅうにある西湖せいこの伝説を集めた『西湖佳話せいこかわ』の中にある『雷峰怪蹟らいほうかいせき』がその原話である。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ちなみに、該主力がいしゅりょくは、百十人乗の爆撃飛行艇三台、攻撃機十五台、偵察機三十台、戦闘機三十台及び空中給油機六台より編成せられ、根拠地西湖せいこと大阪との距離は千五百キロ
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
青年漢于仁かんうじんは、今日も窓のそばに、椅子をよせて、遙かに光る西湖せいこの風景を眺めていた。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
湖南こなん浄慈寺じょうじじに来てわしを尋ねるが宜い、今、わしがを云って置くから、覚えているが宜い、もとこれ妖蛇ようじゃ婦人に変ず、西湖せいこ岸上がんじょう婦身ふみを売る、なんじよく重きにって他計たけいう、なん有れば湖南こなん老僧を見よ
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
比律賓フィリッピン第四飛行聯隊の主力は、オロンガボオ軍港を脱出し、中華民国浙江省せっこうしょう西湖せいこに集結せるものの如く、しかして此後このごの行動は、数日後を期して、大阪もしくは東京方面を襲撃せんとするものと信ぜらる。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)