表町おもてまち)” の例文
長吉ちやうきちのわからずやはれも亂暴らんぼううへなしなれど、信如しんによしりおしくはれほどにおもりて表町おもてまちをばあらじ、人前ひとまへをば物識ものしりらしく温順すなほにつくりて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
みな表町おもてまちなる大通おおどおりの富有の家に飼われしなりき。夕越ゆうごえくれば一斉にねぐらに帰る。やや人足繁く、戸外おもて往来ゆきかうが皆あおぎて見つ。楓にはいろいろのもの結ばれたり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
表町おもてまちの通りに並ぶ商家も大抵は目新しいものばかり。以前この辺の町には決して見られなかった西洋小間物屋、西洋菓子屋、西洋料理屋、西洋文具店、雑誌店のたぐいが驚くほど沢山出来た。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
赤坂表町おもてまちへは弾正坂だんじょうざかの辻番所。
あれが頭の子でなくばと鳶人足とびにんそくが女房の蔭口かげぐちに聞えぬ、心一ぱいに我がままをとほして身に合はぬはばをも広げしが、表町おもてまちに田中屋の正太郎しようたらうとて歳は我れに三つ劣れど
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あさがへりの殿とのがた一じゆんすみて朝寢あさねまちかど箒目はゝきめ青海波せいがいはをゑがき、打水うちみづよきほどにみし表町おもてまちとほりを見渡みわたせば、るはるは、萬年町まんねんてう山伏町やまぶしてう新谷町しんたにまちあたりをねぐらにして
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
背負しよひあるくさま、としはとへば生意氣なまいきざかりの十六にもりながら其大躰そのづうたいはづかしげにもなく、表町おもてまちへものこ/\とかけるに、何時いつ美登利みどり正太しようたなぶりものになつつて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)