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芽峠
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めたうげ
近江の
國へ
山越に、
出づるまでには、
中の
河内、
木の
芽峠が、
尤も
近きは
目の
前に、
春日野峠を
控へたれば、
頂の
雲眉を
蔽うて、
道のほど五
里あまり、
武生の
宿に
着いた
頃
十六七
年を
過ぎました。——
唯今の
鯖江、
鯖波、
今庄の
驛が、
例の
音に
聞えた、
中の
河内、
木の
芽峠、
湯の
尾峠を、
前後左右に、
高く
深く
貫くのでありまして、
汽車は
雲の
上を
馳ります。
夜汽車の
火の
粉が、
木の
芽峠を
螢に
飛んで、
窓には
其の
菖蒲が
咲いたのです——
夢のやうです。………あの
老尼は、お
米さんの
守護神——はてな、
老人は、——
知事の
怨靈ではなかつたか。