肺炎はいえん)” の例文
『どうして、岩のようにじょうぶだ』とその紳士しんしが言った。『十人に九人までは死ぬものだが、あれは肺炎はいえん危険きけんを通りこして来た』
自分の級に英語を教えていた、安達あだち先生と云う若い教師が、インフルエンザから来た急性肺炎はいえんで冬期休業の間に物故ぶっこしてしまった。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
隆吉の下に霜江しもえと云う娘があったけれど、十一の時に肺炎はいえんで死なせてしまった。いま生きていれば、二十三の娘ざかりである。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
あのような神か魔か分らないほどのえらいポーデル博士も肺炎はいえんにでもなって、とこについてうんうんうなっているのではないかと心配している。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
流感りゅうかんらしいんですね。肺炎はいえんになるといけないから、いま湿布しっぷをしてやりました。」と、叔母おばさんが、こたえました。
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから急性きゅうせい肺炎はいえんになり、うわごとを言い通していましたが、四日目の夜中に、ついに死んでしまいました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
次郎さんは到る処で可愛がられた。学課の出来も好かった。両三日前の大雪に、次郎さんは外套がいとうもなくれて牛乳を配達したので、感冒かぜから肺炎はいえんとなったのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その後ある人の周旋しゅうせん街鉄がいてつの技手になった。月給は二十五円で、家賃は六円だ。清は玄関げんかん付きの家でなくっても至極満足の様子であったが気の毒な事に今年の二月肺炎はいえんかかって死んでしまった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
でもこの肺炎はいえんのおかげで、わたしはアッケン家の人たちの親切、とりわけてエチエネットの誠実せいじつをしみじみ知ったのであった。
そのから、急激きゅうげきねつたかくなって、医者いしゃにもかかったけれど、ついに悪性あくせい肺炎はいえんこし、近所きんじょ人々ひとびと看護かんごをしてくれたかいもなく、とうとう、んでしまいました。
万の死 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ええ、肺炎はいえんになりましたものですから、——ほんとうに夢のようでございました。」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたしがまだ来なかったじぶん、ジョリクールは肺炎はいえんにかかったことがあった。それでかれのうでにはりをさして出血させなければならなかった。
そのいえまずしくて、かぜから肺炎はいえん併発へいはつしたのに手当てあても十ぶんすることができなかった。
三月の空の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
肺炎はいえんのふつうの経過けいかとして、かれはまもなくせきをし始めた、この発作ほっさのたびごとに小さなからだがはげくふるえるので、かれはひどくこれを苦しがった。
実際じっさいわたしは胸にはげしい焮衝きんしょう(焼きつくような感じ)を感じた。病気は肺炎はいえんであった。
一とおり診察しんさつして、医者はかわいそうなジョリクールが今度もやはり肺炎はいえんにかかっていることをげた。医者はさるの手を取って、その血管けっかんに少しも苦しませずにランセット(針)をさしこんだ。