老婢ばあや)” の例文
老婢ばあやの話によると、宇都宮のざいにいる老人の甥の娘とかが今度むこを取るについて、わざわざ呼ばれて行ったということであった。
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
手を引張られて、慶三は黙ってその儘二階へ上ると、お千代もその後について上ったなり、一向下へは行かず、老婢ばあやを呼上げて氷を取り寄せ
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
瑠璃子は、その朝、顔を洗ってしまうと平素いつもの通り、老婢ばあやが自分のへやの机の上に置いてある郵便物を、取り上げて見た。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
三十男の遊び盛りを今が世の絶頂つじと誰れが目にも思われる気楽そうな独身ひとりみ老婢ばあや一人を使っての生活くらしむきはそれこそ紅葉山人こうようさんじんの小説の中にでもありそうな話で
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
エモンを字のごとくイモンと読んできぬけたもん心得こゝろえ小説家せうせつかがあつたさうだが、あるわか御新造ごしんぞう羽織はをり幾枚いくまいこしらへても、実家じつかもんを附けるのを隣の老婢ばあやあやしんでたづねると
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
「五十四になる老婢ばあやを呼んだつて、お前、始らんぢやないか」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
お料理はお杉という老婢ばあやが受持ちで、ほかの男や女中たちを指図して忙しそうに働いていましたが、祖母の顔をみると小声で言いました。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
母がくなってからは、父子おやこ三人のさびしい家であった。段々差し迫って来る窮迫に、召使の数も減って、たゞ忠実な老婢ばあやと、その連合つれあいの老僕とがいるだけだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
老婢ばあや、お前が悪いんだ。すぐに二階を片付けて置かないからさ。どうでもお前の勝手にするがいい。」
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
良人やどわたしとしの十いくつも違ふのですもの、永く役に立つやうにして置かねばと何でも無しの挨拶あいさつに、流石さすがおせつかいの老婢ばあやもそれはそれはで引下ひきさがつたさうだ此処迄こゝまで来ればうらみは無い。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
なにしろ前に云ったような獲物だからお話にならない。浅蜊はとなりの家へやって、鰈は老婢ばあやとふたりで煮て食ってしまったというのであった。
半七捕物帳:32 海坊主 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
千代香はいよいよ素人しろとのお千代になって、ここに目出度めでたく神楽坂裏の妾宅に引越し、待合松風の世話で来た五十ばかりの老婢ばあやを相手に一日ごろごろ所在なく暮す身分となった。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
老婢ばあやは、何かに取り紛れてゐるのだらう、容易に取次ぎには出て来ないやうだつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
森君は三十幾歳いくつの今年まで独身で、老婢ばあやひとりと書生一人の気楽な生活である。雑誌などへ時どき寄稿するぐらいで、別に定まった職業はない。
慈悲心鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
老婢ばあやは、何かに取り紛れているのだろう、容易に取次ぎには出て来ないようだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
一旦は躊躇したものの、思い切って格子をあけると、おなじみの老婢ばあやが出て来て、すぐに奥へ通された。
半七捕物帳:61 吉良の脇指 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
店の若い衆が二人と小僧が三人、ほかにはお広という老婢ばあやと、おすみという若い下女がいる。店がかりは派手でないが、手堅い商売をして内証もゆたかであるらしい。
半七捕物帳:35 半七先生 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
先日聞いておいた番地をたよりに、尋ねたずねて行き着くと、庭は相当に広いが、四間よまばかりの小さな家に、老人は老婢ばあやと二人で閑静に暮らしているのであった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この頃はあまり世間と交際つきあいをしないらしい半七老人のうちにも、さすがは春だけに来客があると思っていると、わたしの案内を聞いておなじみの老婢ばあやがすぐに出て来た。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わたしは遠慮なしに飲んで食って、踊りの家台やたいの噂などをしていたが、雨はだんだん強くなるばかりで、家の老婢ばあやがあわてて軒提灯や飾り花を引っ込めるようになって来た。
半七捕物帳:05 お化け師匠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わたしも最後まで聴きはずすまいと耳を澄ましていると、老人は床の間の置時計をふと見かえって、女中部屋の老婢ばあやを呼んだ。老婢が顔を出すと、老人はなにか眼で知らせた。
半七捕物帳:50 正雪の絵馬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
きっとこの恨みは晴らしてやるというようなことを、仲のいい老婢ばあやに泣いて話したそうだ
半七捕物帳:16 津の国屋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いつもの座敷へ通されて、年頭の挨拶がかたのごとくに済むと、おなじみの老婢ばあやが屠蘇の膳を運び出して来た。わたしがここの家で屠蘇を祝うのは、このときが二度目であったように記憶している。
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
門を這入って案内を求めると、おなじみの老婢ばあやが出て来た。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
老人は老婢ばあやを呼んで、すぐに蝋燭を持って来させた。
半七捕物帳:47 金の蝋燭 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
老婢ばあや、どうだい、天気がおかしくなったな」
半七捕物帳:18 槍突き (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
老婢ばあや。お客様だよ」
半七捕物帳:03 勘平の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)