編輯者へんしゅうしゃ)” の例文
大衆雑誌の編輯者へんしゅうしゃが「捕物小説を一つ入れなければ、売る自信が持てない」というのも、決して誇張やお世辞ではないようである。
最少もすこし具体的にいえばどうしたら『新小説』と『文芸倶楽部ぶんげいクラブ』の編輯者へんしゅうしゃがわれわれの原稿を買うだろうかとの問題ばかりであった。
霊廟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さて、兵隊さんの原稿の話であるが、私は、てれくさいのをこらえて、編輯者へんしゅうしゃにお願いする。ときたま、載せてもらえることがある。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
数人の編輯者へんしゅうしゃがあって、巻ごとに違っているとは言えませぬけれども、巻によって誰かが主になって書いたという違いがあると思います。
古代国語の音韻に就いて (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
この機会に私は『文学界』の以前の及び現在の編輯者へんしゅうしゃ、式場俊三、内田克己、庄野誠一の三君に特に謝意を表しなければならぬ。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
あの編輯者へんしゅうしゃの咽喉もとを締めつけてやって下さい。パイプを咥えて気取って、二時間も、あの暗い狭い玄関に待たされる。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
犯人につきまとう怪談、獄門舟の妖異、加うるに人気者明智探偵の誘拐、新聞編輯者へんしゅうしゃにとって何という好題目であろう。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
自分の良心の上からばかりでなく、ほかの雑誌の編輯者へんしゅうしゃに、さぞ迷惑をかけたろうと思うと、実際いい気はしない。
校正後に (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
私が日本に帰った時(正岡はもう死んで居た)編輯者へんしゅうしゃの虚子から何か書いてれないかとたのまれたので、始めて『吾輩は猫である』というのを書いた。
処女作追懐談 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
社会の先覚者をもって任じているはずの新聞雑誌の編輯者へんしゅうしゃ達がどうして今日唯今でもまだ学位濫授を問題にし
学位について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
おそらくよその国には見られぬこの破格の優遇も、却って文庫編輯者へんしゅうしゃの並々ならぬ達見を思わせるほどだ。
急いで書き揚げられた原稿を売りに、ある雑誌の編輯者へんしゅうしゃの自宅を訪ねなどもした。生前M先生と交渉のなかったその記者は、周りにいろいろの陶器を集めて楽しんでいた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「家の光」の編輯者へんしゅうしゃから、何か夏の晩の椽先えんさきなどで、子供や女たちといっしょに読んで面白いような、話はないかという相談を受けた、それは幾らでも捜したらあると思う。
なぜなら、新人発掘が商売の編輯者へんしゅうしゃ諸君の大部分が知らなかったからである。知らないのは無理がないので、花田清輝が物を書いていた頃は彼等はみんな戦争に行っていたのだから。
花田清輝論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「南洋だより」は、編輯者へんしゅうしゃ並びに読者に不満の由。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
この新聞(帝大新聞)の編輯者へんしゅうしゃは、私の小説が、いつも失敗作ばかりで伸び切っていないのを聡明にも見てとったのに違いない。
鬱屈禍 (新字新仮名) / 太宰治(著)
けれども、それは、ただ編輯者へんしゅうしゃ御情おなさけで誌上にあらわれただけで、一銭の稿料にもならなかったらしい。自分が彼の生活難を耳にしたのはこの時である。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
即ち明治四十二年の秋八月のはじめに稿をおこし十月の末に書き終るが否や亡友井上唖唖いのうえああ君に校閲を乞い添刪てんさんをなしたのち草稿を雑誌『新小説』編輯者へんしゅうしゃもとに送った。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そこで僕は今、この話を書く事によって、新小説の編輯者へんしゅうしゃに対する僕の寄稿のせめまっとうしようと思う。
西郷隆盛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
然るに私は公明正大、第一この懸賞には、この雑誌の編輯者へんしゅうしゃまで読者の一人として解答を寄せることになっております。即ち私は解決篇の原稿を厳封して、応募答案の〆切前に編輯者に渡します。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
折角せっかく気を入れて書き上げた創作などが、雑誌編輯者へんしゅうしゃに握りつぶされたことも一二度ではなく、そこへ持って来て、彼の性質が、ただ文字の遊戯などで満足するには、余りに貪婪どんらんであったものですから
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わがままな形式の作品だったので、編輯者へんしゅうしゃに非常な迷惑をおかけした様子である。HUMAN LOSTという作品だ。
鉄面皮 (新字新仮名) / 太宰治(著)
郵便物は皆しっとりれていた。葉書が三枚その中の二枚は株屋の広告一枚は往復葉書で貴下のすきな芸者と料理屋締切しめきりまでに御返事下さいなどと例の無礼千万な雑誌編輯者へんしゅうしゃの文言。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その編輯者へんしゅうしゃの序文の中に、ことによるとゴオティエの短篇が、ヘッベルにヒントを与えたのかも知れないという、もっともらしい説をあげていたから、またゴオティエを引っぱり出してみて
仏蘭西文学と僕 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
主筆から彼の批評は既に前号にせたという返書を得て調べて見ると、ページの最後の一行にただ「ポーリン是は譫言うわごとなり」とあった。同雑誌の編輯者へんしゅうしゃが一行余った処へ埋草に入れたものである。
長塚節氏の小説「土」 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
論ずるだけがヤボであり、そういう文学以前の問題にかかずらって一席弁じるサルトル先生もなさけない先生だが、作家に向い弁明などと注文せられる向きの編輯者へんしゅうしゃ諸先生は先ずもって三思三省せらるべし。
余はベンメイす (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
いわば、新聞編輯者へんしゅうしゃとして既に一家を成していました。お二人が帰られてから私は羽織を脱ぎ、そのまま又布団ふとんの中にもぐりこみ、それからしばらく考えました。
心の王者 (新字新仮名) / 太宰治(著)
編輯者へんしゅうしゃ 支那シナへ旅行するそうですね。南ですか? 北ですか?
奇遇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
きょうが約束の締切日しめきりびということになっていた或る雑誌の原稿を取りに、若い編輯者へんしゅうしゃがやって来た。
フォスフォレッスセンス (新字新仮名) / 太宰治(著)
きみと、しんじゅうするくらいに、きみを好いてくれるような、そんな、編輯者へんしゅうしゃでも出て来ぬかぎり、きみは、不幸な、作家だ、と一語ずつ区切ってはっきり言った。
懶惰の歌留多 (新字新仮名) / 太宰治(著)
私は編輯者へんしゅうしゃから恵送せられたのであるが、一覧するに、この雑誌の読者は、すべてこれから「文学というもの」を試みたいと心うごき始めたばかりの人の様子なのである。
困惑の弁 (新字新仮名) / 太宰治(著)
創作余談、とでもいったものを、と編輯者へんしゅうしゃからの手紙にはしるされて在った。それは多少、てれくさそうな語調であった。そう言われて、いよいよてれくさいのは、作者である。
創作余談 (新字新仮名) / 太宰治(著)
きょう、この作品を雑誌社に送らなければ、私は編輯者へんしゅうしゃに嘘をついたことになる。私は、きょうまでには必ずお送り致します、といやに明確にお約束してしまっているのである。
乞食学生 (新字新仮名) / 太宰治(著)
今年正月号には、私の血一滴まじって居るとさえ思わせたる編輯者へんしゅうしゃの手紙のため。
雑誌社の編輯者へんしゅうしゃが、たぶんここだろうと思った、と言ってウイスキー持参であらわれ、その編輯者の相手をしてまたそのウイスキーを一本飲みつくして、こりゃもう吐くのではなかろうか
(新字新仮名) / 太宰治(著)