つづき)” の例文
旧字:
この話にもちょっとしたつづきがある。二、三年前、私は或る方面からの委託研究のことで、○○廠長しょうちょうという偉い人に会ったことがある。
しかもお雪が宿の庭つづき竹藪たけやぶ住居すまいを隔てた空地、直ちに山の裾が迫る処、その昔は温泉湧出わきでたという、洞穴ほらあなのあたりであった。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前の歌のつづきで、憶良が旅人の心に同化して旅人の妻を悼んだものである。おうちは即ち栴檀せんだんで、初夏のころ薄紫の花が咲く。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
昨夜ゆうべ書きかけた里へやる手紙のつづきを書こうと思って、筆をりかけた彼女は、いつまでっても、夫婦仲よく暮しているから安心してくれという意味よりほかに
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
歌麿は三枚つづき五枚続また七枚続の如きだいなる板画を制作したる後、一枚絵にてその数六枚七枚十枚十二枚、時には二十余種にて一組の画帖がじょうとなるべきものをおびただしく描きたり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
勝手な処で、山の下へ、やぶへ入って見えなくなったのが——この山つづきのようですから、白鷺の飛んだ方角といい、やしろのこのあたりか。ずッと奥になると言いますね、大沼か。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
藤尾は黙って最前小野さんから借りた書物を開いてつづきを読んでいる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先生むぐらではございますが、庭も少々、裏が山つづきで風もよしまちにも隔って気楽でもございますから御保養かたがたと、たって勧めてくれたのが、同じ教子の内に頭角を抜いて
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時ならず、花屋が庭つづきやぶの際に、かさこそ、かさこそとひびきを伝えて、ややありて一面に広々として草まばらな赤土の山のすそへ、残月の影に照らし出されたのは、小さい白い塊である。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
立込んだ家つづきだから、あっちこち、二階の欄干に、あかい裏がひるがえり、水紅色ときいろを扱った、ほしものはかかっていても、陰がこもって湿っぽい、と云ううちにも、掻巻かいまきの袖には枕が包まれ、布団の綴糸つづりいと
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一体堀割の土手つづきで、これから八幡はちまん前へ出る蛇のうねった形の一条ひとすじ道ですがね、洲崎すさきへ無理情死しんじゅうでもしに行こうッて奴より外、夜分は人通のない処で、場所柄とはいいながら、その火事にさえ
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
新版ものの表紙、錦絵の三枚つづき、二枚合せ、一枚もの、就中なかんずく飼鶏がぱっと色彩を放って、金、銀、みどりくれない、紫、あらゆる色のここに相応ずる中に、墨絵にたる立姿は、一際水が垂りそうである。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)