終日いちにち)” の例文
「母様とは私の面倒を見て下さって、私を可愛かあいがって、そして、いま少し、もう少しって——終日いちにち——縫物をして居る人です」
少年・春 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
ところが或る晩——街には終日いちにち雨が降りつづいて、濡れた歩道の上に夜の幕が落ちかかった時であったが、そろそろ家へ帰ろうとしていると
フェリシテ (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
それから昨日きのう終日いちにち畠耘はたけうないをしていたが、つい忘れていると、其の翌晩又来て、何故なぜ剥して下さいませんというから、ちげえねえ、ツイ忘れやした
半べという馬鹿の大男がのっしのっしと終日いちにち、村中をほっつきまわっているのが世の中で一ばん恐ろしかった。
大根の葉 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
あたしの家の真向こうに——三立社のしりにこの辺にはあるまじいほどささやかな、小さな小屋で首を振りながら、終日いちにち塩せんべを焼いているお婆さんがあった。
旧聞日本橋:02 町の構成 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
終日いちにちそらくもってひかりすらささないでありましたが、みんなは元気げんきで、学校がっこうからかえりに、雪投ゆきなげをしたり、また、あるものは相撲すもうなどをったりしたので、政雄まさお
赤い手袋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とうとうその翌日あくるひ終日いちにち、その翌る晩も夜通し、その又翌る日も終日いちにち、入れ代り立ち代り大勢の人々が、オイオイ泣きながらこの綱を引きましたが、やっと三日目の晩方
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「今日も朝から、終日いちにち探したんだが、何うしても行方が解らない。」とYは吐息をついた。
ブロンズまで (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
終日いちにちこゝにゆきゝして遊びくらす。
欅は終日いちにち 雲を迎へて雲を送つた
濡れる展望 (新字旧仮名) / 仲村渠(著)
浴衣ゆかた行水ぎょうずい終日いちにちつかれを洗濯して、ぶらぶら歩きの目的は活動もなくカフェもない、舞台装置のひながたと、絵でいった芝居見たままの、切組み燈籠どうろうが人を寄せた。
ほんとうにわたしは、どんなにさびしかったかしれない。ながあいだ、みんなはわたしいててくれるものもなかったのです。わたしは、終日いちにちあめにさらされていることもありました。
煙突と柳 (新字新仮名) / 小川未明(著)
終日いちにち部屋に引つ込んだきりで稀に訪れても彼は溜息ばかりいてゐる、赤鬼のやうなあいつが青鬼になつて顔を顰めてばかりゐるかと思つてゐるうちに遂々とう/\熱まで出した……。
鵞鳥の家 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
犬どもはその日朝から終日いちにち騒ぎ立っていたのであった。
犬舎 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
終日いちにちこゝにゆきゝして遊びくらす。
そのくる太陽たいようは、よほどふかかんがごとがあるとみえて、終日いちにちかおせませんでした。
煙突と柳 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「これからどうする? その君に終日いちにちつき合ふのも……君だつて……」
蔭ひなた (新字旧仮名) / 牧野信一(著)