素麺そうめん)” の例文
おつなは何時ものやうに、粗末な鼠つぽい阿波縮あはちぢみ單衣ひとへを着て、彼の枕元に立つて居た。「素麺そうめんが出來たから下へ行つておあがりよ。」
少年の死 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
饂飩うどん素麺そうめんの湯煮たのを二、三十本混ぜて蒸しても洒落しゃれていますし、米の粉を大匙二杯ばかり入れて蒸しても美味しいものが出来ます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
老人は自分から胸元を見下し、指を拡げて裏から白髯はくぜんしごいた。長い白髯は春の光の中で、支那素麺そうめんのように清らかに輝いた。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
紺の上っぱりを着て、古ぼけた手拭で姉さんかぶりをした母が、後ろ向きに店の隅に立って、素麺そうめん箱の中をせせりながら
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
格子にならんだ台所で、三十三四の女が今夜のたなばたに供えるらしい素麺そうめんを冷やしていた。半七は近よって声をかけると、かれは主婦あるじのお豊であった。
半七捕物帳:35 半七先生 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お茶屋もかかっておりまするで、素麺そうめん、白玉、心太ところてんなど冷物ひやしものもござりますが、一坂越えると、滝がござります。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……(ためいきをついて)わたしゃもう久しいこと、お素麺そうめんを食べないよ、情けないったらありゃしない。
曲からうけた感銘に、ほろほろとしている主客を、救ってくれたのは、鼓村師の好きな素麺そうめんだった。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
朝は粥にして、玉蜀黍とうもろこしおぎない、米を食い尽し、少々の糯米もちごめをふかし、真黒い饂飩粉うどんこ素麺そうめんや、畑の野菜や食えるものは片端かたっぱしから食うて、粒食の終はもう眼の前に来ました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
土曜日には、白スープと豌豆えんどう素麺そうめん、それにどろどろのおかゆが出ます。これにはみんなバタがつくのでございます。日曜には、乾魚とお粥がスープにつくことになっております。
成程さう言へば、鯉の瀧上りが、金魚が素麺そうめんを食つてゐるやうで、甚だしく野暮です。
例のきらひから、丁度夏座敷だつたので、女中に台所から冷し素麺そうめんの桶を持ち込ませて、それをいきなり頭からひつかぶつて、素麺の雨の中から鵞鳥のやうな苦しい声を振絞つて
「ええ、実はそのお。」「ええ、実はそのお。」で、ややひびの入った重い濁り声で、咄弁とつべんでもなく雄弁でもなく、ただ冗漫言をだらだらと素麺そうめん式にいてゆくだけであるので驚いた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
ソコで洗手盥ちょうずだらい金盥かなだらいも一切食物しょくもつ調理の道具になって、暑中など何処どこからか素麺そうめんを貰うと、その素麺を奥の台所で湯煮ゆでて貰うて、その素麺を冷すには、毎朝、顔を洗う洗手盥をもって来て
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
檐頭えんとうに立寄りて、何にてもよし食ふべきものありやと問ふに、素麺そうめんの外には何物もあらずと答ふ。止むなくこれを冷させて食ふ。常は左程このまざるものなれど、そのうまきことたとふるにもの無し。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
ちょうど素麺そうめん位な鉄線を長さ一尺五寸位ずつ七本にってあの図を側へ置きながら小さな擂木すりこぎの頭で互い違いに鉄線の中ほどをまるく曲げて手元の方を
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
つめたい素麺そうめんがほしい。
一九二九年一月――二月 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
第九十三 ジャミセージプデン これは西洋の素麺そうめんのようなものです。それを大匙三杯ほど三十分間も湯煮ますが最初水が沸立つ時よく掻き廻さないと底へ沈んでげ付きます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ゼラチンで寄せると美味うございますが、それを素麺そうめんのようにするのはほかの時の倍位即ち一合に六、七枚のゼラチンを入れて氷で固めて寒天突かんてんづきをよくらしておいて水の中へ突出します。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
素麺そうめん 一四・〇五 一一・二五 〇・八八 六七・四七 — 六・五一
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
うめ素麺そうめん 秋 第百九十九 梅料理
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)