-
トップ
>
-
精一杯
>
-
せいいつぱい
氷嚢が
生憎無かつたので、
清は
朝の
通り
金盥に
手拭を
浸けて
持つて
來た。
清が
頭を
冷やしてゐるうち、
宗助は
矢張り
精一杯肩を
抑えてゐた。
帳場から
此處へ
參る
内も、
此の
通りの
大汗と、
四人の
車夫は
口を
揃へ、
精一杯、
後押で、お
供はいたして
見まするけれども、
前途のお
請合はいたされず。
其聲は
距離が
遠いので、
劇しく
宗助の
鼓膜を
打つ
程、
強くは
響かなかつたけれども、たしかに
精一杯威を
振つたものであつた。さうして
只一人の
咽喉から
出た
個人の
特色を
帶びてゐた。
「
私不調法にていたし
方ござなく、
其が
精一杯に
候」と
額に
汗して
聞え
上ぐる。