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そらぞら
ふりがな文庫
“
空々
(
そらぞら
)” の例文
その悲しみとその悶えとを俺に見せまいと押し隠し
空々
(
そらぞら
)
しい
笑
(
え
)
みを顔に
湛
(
たた
)
えて俺の方へ手を延ばすその柵を見たいのだ。早く柵を連れて来い!
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
世にいう政治家らしい
空々
(
そらぞら
)
しさや無気味なところはなく、私の老妻が、首相を前にして、「お目にかかるまで、怖いお方かと思っておりました」
随筆銭形平次:18 平次読む人読まぬ人――三人の政治家――
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
所謂「思想家」たちの書く「私はなぜ何々主義者になったか」などという思想発展の回想録或いは宣言書を読んでも、私には
空々
(
そらぞら
)
しくてかなわない。
苦悩の年鑑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
すくなくとも、
不馴
(
ふな
)
れな文字では血肉がこもらなくて、自分の文字のようには見えず、
空々
(
そらぞら
)
しくて、観念がそれについて伸びて行かないのであった。
文字と速力と文学
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
もとよりそれは
偽首
(
にせくび
)
だった。が、偽首と分ったあとの
空々
(
そらぞら
)
しい敗北感はいつまで後味わるく尾をひくものであった。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
「僕の詫
様
(
よう
)
が
空々
(
そらぞら
)
しいとでも云うのかね、なんぼ僕が金を欲しがるったって、これでも
一人前
(
いちにんまえ
)
の男だよ。そうぺこぺこ頭を下げられるものか、考えても御覧な」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
が、社長沼南は位置相当の門戸を構える必要があったとはいえ、堂々たる生活をしながら社員が急を訴えても
空々
(
そらぞら
)
しい貧乏咄をしてテンから相談対手にならなかった。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
空々
(
そらぞら
)
しく思われないでもないと、日頃思っていたからで、形において、夫にさきだたれた独身者であるということを、証明する必要のないものは、かえって人目に立って
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
叔母は
空々
(
そらぞら
)
しく気の毒だとかすまないとかいい続けながら錠をおろした
箪笥
(
たんす
)
を一々あけさせて、いろいろと勝手に好みをいった末に、りゅうとした
一揃
(
ひとそろ
)
えを借る事にして
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
子供の楽園だとかずいぶん
空々
(
そらぞら
)
しいお世辞を言われてさえこれを信ずるほどであるゆえ、多少事実に近いことを言われてたちまち得意になるは無理もないが、およそ物はほめようと思えば
民族の発展と理科
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
疾
(
と
)
く/\拙者と御一緒にお帰り遊ばされ候へと、
泣沈
(
なきしず
)
む娘を引立て行かむとするにぞ、一人の侍今はこれまでなりと覚悟致し候様子にて、
突
(
つ
)
と立上り、
下手
(
したて
)
に
出
(
い
)
でをれば
空々
(
そらぞら
)
しきその意見
榎物語
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
来
(
く
)
ると、まるで
空々
(
そらぞら
)
しい
無理
(
むり
)
な
元気
(
げんき
)
を
出
(
だ
)
して、
強
(
し
)
いて
高笑
(
たかわらい
)
をして
見
(
み
)
たり、
今日
(
きょう
)
は
非常
(
ひじょう
)
に
顔色
(
かおいろ
)
がいいとか、
何
(
なん
)
とか、ワルシャワの
借金
(
しゃっきん
)
を
払
(
はら
)
わぬので、
内心
(
ないしん
)
の
苦
(
くる
)
しくあるのと、
恥
(
はずか
)
しくある
所
(
ところ
)
から
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
例の
歪
(
ゆが
)
める口を
窄
(
すぼ
)
めて内儀は
空々
(
そらぞら
)
しく笑ひしが、
忽
(
たちま
)
ち彼の羽織の
紐
(
ひも
)
の
偏
(
かたかた
)
断
(
ちぎ
)
れたるを
見尤
(
みとが
)
めて、
環
(
かん
)
の失せたりと知るより、
慌
(
あわ
)
て驚きて起たんとせり、
如何
(
いか
)
にとなればその環は純金製のものなればなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
品物の出し入れや飾りつけ、値段などを少しずつ覚えることはお庄にとって、さまで苦労な仕事ではなかったが、この女を阿母さんと呼ぶことだけは
空々
(
そらぞら
)
しいようで、どうしても調子が出なかった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
よくもまあそんな
空々
(
そらぞら
)
しい事が仰ゃれたもの。
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
小林はわざと
空々
(
そらぞら
)
しい様子をした。はてなと考える態度まで
粧
(
よそお
)
って見せた。お延は
詰責
(
きっせき
)
した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
昔葉子に誓った言葉などは忘れてしまった裏切り者の
空々
(
そらぞら
)
しい涙を見せたりして、雨にぬらすまいと
袂
(
たもと
)
を大事にかばいながら、傘にかくれてこれも
舷梯
(
げんてい
)
を消えて行ってしまった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
と
空々
(
そらぞら
)
しく聞こえるように答えた。夫人はまだ葉子の心持ちには少しも気づかぬふうで
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「これじゃ
空々
(
そらぞら
)
しくっていけない、
昨夜
(
ゆうべ
)
会った事も何とか書かなくっちゃ」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分はそれを明かに自覚した。それからその
空々
(
そらぞら
)
しさがよく相手の頭に映っているという事も自覚した。けれどもどうする訳にも行かなかった。自分は嫂に「
冴
(
さ
)
え返って寒くなりましたね」と云った。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
空
常用漢字
小1
部首:⽳
8画
々
3画
“空々”で始まる語句
空々寂々
空々漠々
空々敷
空々然
空々若々