種々くさ/″\)” の例文
種々くさ/″\なる旗章は其さきひるがへれり。光景は拿破里ナポリに似たれど、ヱズヰオの山の黒烟を吐けるなく、又カプリの島の港口によこたはれるなし。
おもふ事なき身もと、すゞろに鼻かみわたされて、日記のうちには今宵こよひのおもふこと種々くさ/″\しるして、やがて哀れしる人にとおもふ。
すゞろごと (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ひつくすべくもあらず、秋草あきぐさ種々くさ/″\かぞふべくもあらじかし。北八きたはち此作このさくごときは、園内ゑんないちらばつたる石碑せきひ短册たんじやく一般いつぱん難澁なんじふ千萬せんばんぞんずるなり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
主のつとめには種々くさ/″\たぐひあり、或は難く或は易し、或は己れの利益にかなひ、或は然らず、基督キリスト我等に語りて曰く
主のつとめ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
種々くさ/″\の買物のほかに奈美女の好む甘き菓子、珍らしき干物ひもの、又は何処いづこより手に入れ来るやらむ和蘭オランダの古酒なんどを汗みづくとなりて背負ひ帰るなんど、その忠実々々まめ/\しさ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
くみ米をかしぎ村方大半呼寄よびよせての大饗應おほふるまひ故村の鎭守ちんじゆ諏訪すは大明神の神主かんぬし高原備前たかはらびぜん并びに醫師玄伯等げんぱくらを上座に居て料理の種々くさ/″\興津鯛おきつだひ吸物すひものいわし相良布さがらめ奴茹ぬたの大鮃濱燒ひらめはまやきどぜう鼈煑すつぽんになどにて酒宴さかもり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「證據は山程ある。此度國元から老僕周吉と申す者が參り、七年に亙る探索で、其方の非曲の種々を調べ上げ、證據の種々くさ/″\をその手文庫に入れてある、御上に差上ぐる前、見たくば後で見るが宜い」
聞及びしかば大いにおどろき扨々我等が不明ふめいゆゑに罪無き杉戸屋富右衞門殿を永々なが/\入牢じゆらう致させくるしめしこと何とも申譯なきあやまり成りと思ひ平吉は早速さつそく杉戸屋富右衞門方へ到つて種々くさ/″\樣々さま/″\に是迄の始末しまつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
安樂あんらくに送りお金は終身しうしん不足ふそくなく此家につか管伴ばんたう忠兵衞は此度の一件に附き盡力じんりよく一方ひとかたならざれば褒美はうびとして宅持たくもちの通ひ管伴ばんたうとなり和吉も種々くさ/″\褒美はうびありしが三年の後長左衞門夫婦は隱居し長三郎は主個あるじとなり和吉は元服げんぷくして二番管伴ばんたうとなり其家ます/\さかえたり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)