かな)” の例文
旧字:
文渓堂ぶんけいどうまた貸本屋などいふ者さへ聞知りて皆うれはしく思はぬはなく、ために代写すべき人をたずぬるに意にかなふさる者のあるべくもあらず云々
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
古代相承していわく、これ大天(ヒンズー教のシワ大神)の部属で、性三宝を愛し、五衆を護持し、損耗なからしむ。求むる者情にかなう。
一日太孫をして詞句しく属対ぞくたいをなさしめしに、おおいかなわず、ふたたび以て燕王えんおうていに命ぜられけるに、燕王の語はすなわち佳なりけり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
若し阿部正弘が榛軒に聴いたとすると、それは榛軒の説が保守主義者たる正弘の旨にかなつたのであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ものして自然に美辞びじのりかなうと士班釵すぺんさあおきなはいいけりまことなるかな此の言葉や此のごろ詼談師かいだんし三遊亭のおじ口演くえんせる牡丹灯籠ぼたんどうろうとなん呼做よびなしたる仮作譚つくりものがたりを速記というほう
怪談牡丹灯籠:01 序 (新字新仮名) / 坪内逍遥(著)
ゆあみすれば、下立おりたちてあかを流し、出づるを待ちて浴衣ゆかたを着せ、鏡をすうるまで、お静は等閑なほざりならず手一つに扱ひて、数ならぬ女業をんなわざ効無かひなくも、身にかなはん程は貫一が為にと
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
旌旗せいきから輜重駄馬しちょうだばまでがそれにかなっているとの風評には一藩のものは皆顔色を失ってしまった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
日に閻浮提えんぶだい洲を三度めぐって疲れず王のおもうままになっていつもその意にかなうという(『正法念処経』二、『法集経』一)。『修行本起経』に紺馬宝は珠のたてがみを具うとあるもこれだ。
彼は一昨年をととしの冬英吉利イギリスより帰朝するや否や、八方に手分てわけして嫁を求めけれども、器量のぞみ太甚はなはだしければ、二十余件の縁談皆意にかなはで、今日が日までもなほその事に齷齪あくさくしてまざるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
僕は神慮にかなっていると見えて、富田に馳走をせいと云う託宣があるのだ。
独身 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それ律は大法を設け、礼は人情にしたがう。民をととのうるに刑を以てするは礼を以てするにかず。それ天下有司に諭し、務めて礼教をたっとび、疑獄をゆるし、朕が万方ばんぽうともにするをよろこぶの意にかなわしめよと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)