“私(そつ)” の例文
「わたし何だか急に来て見たくなつて、私(そつ)と脱出(ぬけだ)して来たの。まさかこんなに遠い処とは思はないでせう、来てみて驚いてしまつたわ。」
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
抽斗(ひきだし)を透(すか)して、私(そつ)と背負揚(しよいあげ)を引張出(ひつぱりだ)して見(み)ると、白粉(おしろい)やら香水(かうすゐ)やら、女(をんな)の移香(うつりが)が鼻(はな)に通(かよ)つて、私(わたし)の胸(むね)は妙(めう)にワク/\して来(き)た。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
或日の午後、彼女は私(そつ)と新造(しんぞ)に其事を話して、廓(くるわ)を脱け出ると土産物を少し調(とゝの)へて、両国から汽車に乗つた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
恁(か)う言(い)ふと、或(あるひ)は嗤(わら)ふ人(ひと)があるかも知(し)れぬ。が、其(それ)は秘密(ひみつ)がなかつた折(をり)のことで、若(も)し有(あ)つたら、其(それ)こそ大事(だいじ)だ。私(わたし)は寧(むし)ろ此不安(このふあん)を消(け)すために、私(そつ)と四畳半(でふはん)へ忍込(しのびこ)んだ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
加之(それに)用心深(ようじんぶか)い其神経(そのしんけい)は、何時(いつ)彼(か)の背負揚(しよいあげ)を見(み)て、手紙(てがみ)に触(さは)つた私(わたし)の手(て)の匂(にほひ)を嚊(か)ぎつけ、或晩(あるばん)妻(つま)が湯(ゆ)に入(い)つた留守(るす)に、私(そつ)と背負揚(しよいあげ)を出(だ)して見(み)ると、手紙(てがみ)はもう中(なか)には無(なか)つた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)