-
トップ
>
-
禍
>
-
わざわひ
既に
目も
眩んで
倒れさうになると、
禍は
此辺が
絶頂であつたと
見えて、
隧道を
抜けたやうに
遥に一
輪のかすれた
月を
拝んだのは
蛭の
林の
出口なので。
あゝ
天は
何とて
斯く
迄無情なると、
私は
暫時眞黒な
雲を
睨んで、
只更怨んだが、
然し
後に
考へると、
世の
中の
萬事は
何が
禍となり、
何が
幸福となるか、
其時ばかりでは
分らぬのである。
其時第一に
堪難く
感じて
來たのは
渇の
苦、
茲だ
禍變じて
幸となると
言つたのは、
普通ならば、
漂流人が、
第一に
困窮するのは
淡水を
得られぬ
事で、
其爲に十
中八九は
斃れてしまうのだが