目標めあて)” の例文
社が退けて家に帰ると、ぼんやりして夜を過ごした。銀座へ出かける目標めあても気乗りもなかった。勿論もちろん、明子はもう誘いに来なかった。
越年 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
彼の机の上には比較的大きな洋書が一冊せてあった。彼は坐るなりそれを開いて枝折しおりはさんであるページ目標めあてにそこから読みにかかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今度は王城の西の大銀杏の樹を目標めあてに、青眼先生の門の前に来まして、紅矢を馬の上から突き落し、自分はキャッと叫びながら馬から飛び降りると
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
わたくしはこの夕月を仰ぎ見て道の赴く方角を推知し、再び飯倉八幡宮を目標めあてにしながら電車通へ出たのであった。
枇杷の花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
阿波へ入る目標めあてにばかり気をとられていて、こっちの内幕を探られていることを、少しも頭においていなかったのが大失策——、こりゃあ天堂一角が
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この安らけき樂しき國、ふるき民新しき民の群居むれゐる國は、目をも愛をも全く一の目標めあてにむけたり 二五—二七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そこで車塚を目標めあてとして進み、ゆくゆくお浦を探したがいいと、こんなように思ったのである。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なにかの目標めあてがないと、わたくしにはとても神様かみさまおがむような気分きぶんになれそうもございませぬ……。
お針仕事が、津々浦々の、女たちにもわかりよいやうに、反物のはばは、およそ男の人のゆきに一ぱいであることを目標めあてとし、その布を、袖に四ツに畳んで折り、身ごろを長く四ツに折ればとれる。
きもの (新字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
きのふの目標めあて、あすの日はみち障礙しやうげ
不可能 (旧字旧仮名) / エミール・ヴェルハーレン(著)
それでは、宇宙の生命なぞという途方もないものを目標めあてにしないで、手近かの智慧というものを研究してみよう。ちょうど研究には手頃のものでもある
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
提灯ちょうちんなんか無論持ち合せようはずがない。自分の方から云うと、先へ行く赤毛布あかげっと目標めあてである。夜だから赤くは見えないが、何だか赤毛布らしく思われる。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お針仕事が、津々浦々の、女たちにもわかりよいやうに、反物のはばは、およそ男の人のゆきに一ぱいであることを目標めあてとし、その布を、袖に四ツに疊んで折り、身ごろを長く四ツに折ればとれる。
きもの (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
十四五間左の方へ濠際ほりぎわ目標めあてに出たら、漸く停留所の柱が見付った。神さんは其所そこで、神田橋の方へ向いて乗った。代助はたった一人反対の赤坂行へ這入った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十四五けんひだりの方へ濠際ほりぎは目標めあてたら、漸く停留所ていりうじよの柱が見付みつかつた。神さんは其所そこで、神田橋の方へいて乗つた。代助はたつた一人ひとり反対の赤坂ゆきへ這入つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その時この濛々もうもうたる大海の一点が、豆ぐらいの大きさにどんよりと黄色く流れた。自分はそれを目標めあてに、四歩ばかりを動かした。するとある店先の窓硝子まどガラスの前へ顔が出た。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
夕方以後の彼は、むしろおのぶ面影おもかげを心におきながら外で暮していた。その薄ら寒い外から帰って来た彼は、ちょうど暖かい家庭の灯火ともしびを慕って、それを目標めあてに足を運んだのと一般であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「運命の宿火しゅっかだ。それを目標めあて辿たどりつくよりほかにみちはない」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)